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シロさんの聞き耳頭巾-6
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だけど出ていったら聞き耳立てていたのがバレてしまう。
ああ、どうしたらいいのか。
いちど静かに外に出て、勢いよくドアを開けて戻って来ようか。
うまくすればたった今までコンビニに行っていた体が繕えるかもしれない。
「ほら。入れるから、じっとしてろよ」
「あっ、駄目。そんな奥まで入れちゃやだ」
「!?」
もう外に行っている余裕はない!!
兄弟子に先を越されてたまるか!
葵琉とニャンニャンしていいのは俺だけなんだ!!
「葵琉っ!!」
立ち上がった弾みに横に重ねてあった書類がフワッと舞い上がって床に散乱したけど、そんなの構わず衝立の向こうに飛び出した。
「葵琉……?」
そこには俺が想像していた組んず解れつの光景はなく、葵琉は長椅子に腰かけた悠夜兄さんの膝枕でぽけーっと平和に耳そうじされていた。
「シロ!!」
「あ~、帰ってきたか志朗」
葵琉は「まだ反対側が終わってないぞ」と引き留めようとする悠夜兄さんの膝からスルリと抜け出して俺の背後に回る。
「帰ってきたかじゃないですよ!! うちの葵琉に何をしたんですか?」
「『うちの』ねぇ~」
思わず本音がポロリと出てしまった。
これはいいネタを見付けたとばかりにニヤニヤし出す兄さんのスマホが鳴って、ヒートアップしそうになっていた戦局は一旦凍結。
何だよ、『中は駄目』って耳の中のことか。
自分の早とちりが途端に恥ずかしくなる。
「やべ、迎えだ」
兄さんにつられて時計を見るともう5時を回ろうとしていた。
「じゃ、後は頼んだぞ」
この場を掻き回すだけ掻き回して猛烈な勢いで飛び出していった兄弟子は、さながら季節外れの台風だ。
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