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沢井流冬の心霊騒動-マモタン恋のキューピッド篇-2
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9時の見回りは俺とシロが担当で、ちゃんと行ってきた証拠に三味線教室と道場にそれぞれロウソクを1本ずつ置いてくる。
それを11時に行く二人が回収してくるという段取り。
こうなったら見回りって言うよりただの肝試しだよね。
「おじちゃん、何でロウソクなの?」
「この方が雰囲気出るだろ?」
お得意の傍迷惑な思い付きだと思ったけど、ロウソク持ってたら歩くのもゆっくりになって良いかもしれない。
グッジョブ、おじちゃん!
『シロ、怖いから手ぇ繋いで』
そんなお手本を11時組に見せたかったけど、流石に恥ずかしくて無理だった。
ロウソクを手にゆっくり歩いて不審な点がないか見て回るけど、隣のシロも退屈そう。
今日は道場も三味線教室もお休みだったからいつもの夜より空気がシンと冷えてるくらいで、怪しい点は特にない。
「何もなかったな」
「だね」
次の回まであと1時間半以上もある。
実は、今行ってきた三味線教室で時間つぶしにうってつけのあるものを借りてきていた。
「あのさ、トランプやらない?」
「お、いいな」
おじちゃんさえ乗せれたら自動的に全員巻き込まれる。
ババ抜き、七並べ、大富豪と一通りやったところで時計の針が11時を指して虎太郎とルミ先生が旅立っていった。
お化け出たらいいのになって、ちょっとだけ思ったりする。
そうしたら、怖がったルミ先生ご虎太郎に引っ付く場面とかあるかもしれないし。
9時の見回りで何か仕掛けでも作っておけばよかったな。
20分ぐらいで二人がロウソクを持って帰ってきた。
距離は縮まったかな?
「結局何も起こらなかったですね」
「そりゃそうよ。犯人ここに居るんだから」
「だから俺じゃないって言ってるだろ? 何が楽しくて夜中に志朗ん家忍び込んで下らねぇイタズラすんだよ」
普段から悪さばっかりするからみんなに狼少年を見るような目で見られてるけど、何故だか可哀想に思えない。
肝試しもとい見回りという今夜のメインイベントも終わって、各自部屋へと引き上げることになった。
一番というか唯一の容疑者である悠夜おじちゃんの部屋の前には餅つきで使った臼が持ってきてある。
こんな妖怪閉じ込めるようなやり方は非道だだの何だの言ってるけど、日頃の行いが物を言うってまさにこの事だと思う。
「トイレに行く度に電話で起こしてやるから覚悟しとけよ」
「はいはい」
まだ文句を言い足りなさそうなおじちゃんを部家に押し込めると、出て来られないように臼で封をする。
悠夜おじちゃんをしっかり幽閉してシロもやっと寝られそうだ。
さぁ、俺も寝ようっと。
ん?
シロの部屋への通り道にある客間にルミ先生が泊まってるんだけど、そこに虎太郎が入って行くのを見てしまった。
まさか夜這い!?
な、わけないよね。真面目な虎太郎だし。
でもちょっと中の様子が気になる。
客間は障子張りだからプライバシー保護という面ではちょっと心もとない。
そんな物音ダダ漏れな客間の前に差し掛かったら自然と足の進みがゆっくりになった。
いけない事だとはわかっているんだけど、好奇心を抑えきれず中の物音に聞き耳を立ててしまう。
「俺が5段に上がって支部長になったら必ず迎えに来ます。だからそれまで待っててください」
「約束よ」
えーーーーーーっ!?
どうしよう。とんでもない瞬間に遭遇してしまった。
いや、まぁ何か聞こえたらいいなとは思ったけどこんな大スクープまでは想定してなかった。
それはともかく、おめでとう虎太郎。
いい返事が貰えて良かったね。
虎太郎の秘めたる恋心をずっと応援してたから自分の事のように嬉しい。
興奮冷めやらぬ俺の前で部屋の電気がスーッと暗くなった。
「!!!」
虎太郎もついに男になるんだね。
これは早速お祝いしなくては。盗み聞きなんかしている場合じゃない。
お祝いの用意をするため台所へ向かう足も地にちゃんと着いてないようなフワフワした感じ。
明日の朝ごはんは俺の担当だから、とっておきのお祝い料理を作ろう。
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