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小鳥との日常
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「おいこら!みことー!!どこ行くんだ!!」
大学のゼミの時間、グループ課題で教授が席を外した隙を狙って、こっそり抜け出そうとしたのだが、どうやら友人に見つかってしまったようだ。
「あ~…悪い!俺、30分くらい抜けるわ!」
追いかけてくる友人に捕まらないよう、廊下を走る足を早めながら叫べば、ふざけんなと怒鳴り声が響き渡る。
「課題どうすんだよっ!」
「俺の担当箇所はあらかた終わってる!!」
振り返ることなく、すっと片手を挙げて、後は任せた!と言い捨て、走るスピードを更にあげた。
「こら待てっ!戻って来い!!…ってか、逃げ足早っ!!」
「諦めろ。今のあいつを止めるのは不可能だって。本人が言ってた通り、30分くらいで帰ってくるから放っとけよ。」
尚も叫び続ける友人を、別の友人が宥める声が遠くから聞こえた。
「はぁ~……お前、あいつがゼミ放り出してどこに行ったか知ってんの??」
「あぁ、大事な大事な小鳥ちゃんのお迎えだよ。」
「小鳥??あいつのペットか何か?」
「違う違う、清峰 小鳥(きよみね ことり)、あいつの弟だよ。」
清峰小鳥は、清峰 尊(きよみね みこと)の弟だ。
まるで、女の子のような名前に加え、容姿も中性的なので、よく妹と間違えられるが、小鳥は弟だ。
今年12歳になる小鳥は、尊の通う暁大学の初等部に通っていて、そろそろ今日の授業が終わる時間だった。
初等部に着くと、正門前ですでに小鳥は待っていた。
その周りを、小鳥よりずいぶん歳上であろう女が数人取り囲んでいる。
「あなたが尊の弟の小鳥ちゃんでしょ??昨日、尊と映画に行く約束してたんだけど、彼来なくって。尊から何か聞いてない??」
「あら!昨日は、私の買い物に付き合ってくれる予定だったのよ!」
「違うわよ!私の家で手料理を食べる約束してたんだから!!」
一人の女が声を発すると、あれよあれよと言う間に口論に発展する。
小鳥は、そんな女達を、無表情でただぼんやりと眺めている。
「あなた達、身体の関係だけの割りきった付き合いしてるんでしょ?それ以外の目的で、彼があなた達に会おうとするとは思えないし、勝手に約束したって思い込んでただけじゃない?尊には、私って本命がいるんだから、この機会に彼は諦めたら?」
一人の女がそう言った瞬間、小鳥の眉がピクリと動いて、まとう空気が不機嫌なものになる。
と言っても、小鳥は、極めて表情に乏しい…基本無表情な子供なので、自分以外の人間には、あの子が今不機嫌だなんて分からないだろう。
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