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小鳥との日常3
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翌日。
結局尊の思惑通り、一緒に祭に行くことになった。
「小鳥、寒くないか??」
「…平気だ。」
いつも、小鳥の服は尊が選ぶ。
今日も、小鳥の全身をコーディネートした後、夜は冷えるからと、出掛ける間際に、仕上げにもこもこした生地の真っ白なパーカーを着せられた。
家を出てしばらくすると、日が傾き出していっきに気温が下がったが、尊の適切なコーディネートのおかげで寒いと感じる事はなかった。
「お?もう皆集まってる感じだな。」
待ち合わせ場所に近付くと、すでにアクア、美羅、臣の姿が見えた。
アクアから、「ことりーんっ!一日ぶり~!」と抱きつきながらの熱烈な出迎えを受ける。
すぐに大学生メンバーも全員揃い、軽く挨拶をかわした後、祭で賑わう神社内へと歩き出した。
*****
皆でしばらく祭を回って好きな食べ物を買い、花見スポットへと移動した。
尊のゼミ仲間が場所取りをしていたらしく、満開の桜の木の下という競争率の高いスポットが確保されていた。
乾杯と同時に大学生メンバーは酒を飲み始めたので、自然と小学生メンバーでだけで固まる形になる。
「小鳥、たこ焼あげる。口開けて?」
左側に、たこ焼を差し出す美羅。
「ことりーんっ!綿あめもあげるー!食べて食べてっ!」
右側に、綿あめを差し出すアクア。
「たこ焼と綿あめって…よく一緒に食べられるな。」
左右から差し出される食べ物をもくもくと口に詰め込む小鳥を、正面に座った臣が感心の目で眺めている。
園宮美羅(そのみや みら)と宮束臣(みやつか おみ)の二人は親戚同士だ。
二人とも、小学生とは思えないほど大人っぽくて、頼りになるお兄さん、お姉さんといった感じのしっかり者だ。
アクアがフランス人形なら、美羅は日本人形のような少女だ。
漆黒という言葉がピタリと当てはまる、肩までの綺麗な髪。同じく漆黒の凛とした瞳に、真っ白な肌、はっきりとした目鼻立ち。小鳥は初めて美羅を見た時、お雛様みたいな女の子だと思った。
アクアと並んでも見劣りすることのない美人で、学校の男子にとても人気がある。
だが、美羅にはすでに臣という許嫁が居る。
二人は親戚であると同時に、許嫁でもある。親が決めた事らしいが、本人達も今の関係を快く受け入れているようだ。
臣も、美羅と同様に和の雰囲気が漂う美形で、いかにも日本男子というような凛々しい少年だ。美羅ととてもお似合いだと思う。
「あー、こら待て二人とも。小鳥、ほっぺたにソースと綿あめの切れ端付いてるぞ。」
桜の木から花びらが落ちる様子をぼーっと観察しながら食べていたからか、どうやら頬に色々とくっついてしまったらしく、面倒見のいい臣がティッシュで拭ってくれる。
「みぃちゃんにも綿あめあげるー!はい、あーん?」
「ありがとアクア。でもちょっと待って、このまま食べたら髪に綿あめくっつきそう。」
美羅は手がたこ焼で塞がっていて、髪をよけられないらしく、困った顔でアクアを制止した。
「臣、取って来て。」
何を、とは言われなくても分かるのだろう。臣は、「ったく、人使いが荒い…」と呟きながら、少し離れた所に置いてある美羅の鞄の方へ向かう。
戻ってきた臣の手には、花の飾りが付いた愛らしいヘアゴムが握られていた。
「ほら。」
「結んで。」
「お前、ホント人使い荒いなぁ…それが好きな男に対する態度か?」
「あら、好きな男だからこその態度じゃない。かなりの特別待遇よ?」
どこが…と、呟いた臣に、美羅が優雅に微笑みかける。
「私、髪は好きな男にしか触らせないって決めてるの。」
「…全く口の上手い。」
何だかんだと文句を言いつつも、臣の美羅を見る目は始終優しい。
二人のやりとりに、本当にお似合いの二人だなとほのぼのする。
だが、ふと大学生メンバーの方に目を向けると、そんなほのぼのした気持ちがいっきにしぼむような光景が繰り広げられていて、小鳥はそっとため息をついた。
視界の端に映るのは、当然のようにゼミの女性陣に囲まれる尊の姿。
囲んでいる女性陣に見覚えがあると思えば、昨日、学校前に来ていたのと同じ女達だ。
あの時あっさりと尊を解放したのは、今日花見の約束があったからなのかと納得がいった。
「ことりん、唐揚げもあげる。」
少し気持ちが落ち込んだ小鳥に気付いたのか、アクアが爪楊枝に刺さった唐揚げを小鳥の口へと差し出し、空いている方の手でよしよしと言いながら小鳥の頭を撫でる。
「昨日のお姉さん達、尊さんのゼミメンバーだったんだねぇ。」
同じことに気付いたらしいアクアにコクリと頷いた。
「こぉーんなに可愛い小鳥を放っといて女の子に囲まれてるなんて、尊さんはなに考えてるのかしら。」
臣に綺麗に髪を結んでもらい、心置きなく綿あめを口に運びながら、美羅が尖った視線を尊に送る。
「あの人が好きな相手じゃ、小鳥も大変だよな。」
アクアと入れ替わりで、美羅と臣も小鳥の頭を労るように撫でる。
美羅と臣には、小鳥の尊への気持ちを直接話して聞かせたわけではないのだが、二人いわく、見てれば分かるとの事で、いつの間にやらすっかりバレていた。
「…確かに尊が女に囲まれてるのは面白くない。でも、平気だ。」
尊が女に囲まれているのを見ると、モヤモヤとした気持ちが沸き上がってはくる。
だが、この程度の事でいちいち落ち込んでいたら、あの女好きの男に片想いなんてしていられない。
モヤモヤを振り払うように、ひたすら食べ物を頬張っていると、後ろから急に誰かに抱きつかれた。
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