アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
暴君との日常5
-
“目が離せない”などと言っていたが、女性陣に呼ばれ、尊はすぐに大学生メンバーの方へと戻っていった。
「女の人に囲まれてても、小鳥のピンチにはすぐ気付いて駆けつけるのはさすがって思うんだけど、あの天然女ったらしっぷりはどうにかならないものかしら。」
戻るなりまた女に囲まれている尊に、美羅が不満をもらす。
「あの見た目なうえ、さらっと女が期待するような事やるのがたち悪いよな。」
「だよねー。しかも、尊さんの場合狙ってやってるわけじゃなくて無自覚だからー。」
臣とアクアも美羅に同意して尊のダメ出しが始まる。
「あ。言ってる側から尊さんが女の子たらし込んでる。」
臣の言葉に皆の視線が少し離れた所に居る尊に集まる。
尊は、ゼミの女子に自分のジャケットを脱いで貸している所だった。
「寒い~とか言って甘えられたんだろうな。」
腕絡めて擦り寄られてたぞと、臣が状況の捕捉説明をする。
確かにその女子はずいぶんと薄着で、特に、短いスカートから見えるむき出しの脚が寒そうだった。きっと、尊の気を引きたくてお洒落したんだろうなと思う。
「あ~あ。あの子絶対、自分は尊さんに特別好かれてるって思ったわよ。」
「だろうねー。あんな事されたら期待しちゃうよねー。」
「でもあれ、絶対特別な意味はなくやってるよな。」
臣の言う通りだと小鳥も思う。
大方、寒いとくっつかれるのが少し鬱陶しくなったから、上着を貸して満足してもらおう程度の考えでしかない。
「……。」
綺麗に4人揃って、溜め息が溢れた。
ジャケットを貸してもらって嬉しそうにはにかむ女の隣、尊もお決まりのどこか嘘っぽい笑顔を振り撒いている。
尊は女と付き合う中で、明確なラインを引いている。
そのラインを越えてこようとしないのであれば、基本的に女には皆に優しい。
ジャケットだって、別にあの子でなくても、誰にだって笑顔で貸すだろう。
恋愛感情に対し極端に否定的な尊は、本気の好意を向けられることをとても嫌う。
そもそも、本気の恋だとか、変わらない愛なんてものの存在を信じていない。
そのくせ本当は、どうしようもないくらい愛されたがりで寂しがり。
でも本人は、その事に気付いていなくて。
一人からたくさんを受けとる事ができないぶん、無意識に薄っぺらな愛をばらまいて、色んな人間から少しずつ愛を集める。
亡くしても問題ない程度の愛。
いくらでも代わりが効く愛。
そんなものいくら集めた所で満たされるはずないのに。
それに気付かず、薄っぺらの愛をばら蒔く相手ばかりがただ増えていく。
なんて、面倒な男だろう。だが、小鳥はそんな面倒な男のことが世界中の誰よりも好きなわけで。
本当に、やっかいな男に捕まってしまった。
「小鳥の目の前でまで、他の女にちょっかいかける事ないのに。」
「だな。本人はちょっかいかけてるつもりすらないから悪気ないんだろうけど。」
「…別に平気だ。慣れてる。」
確かに、尊のジャケットを他の女が来ていて、しかもその女が明らかに尊を狙っているという今の状況は小鳥にとっておもしろいものではない。
だが、尊の天然女たらしに振り回されるのは日常茶飯事なので、尊を好きでいる以上、嫉妬はつきものだと諦めている。
「でもさーことりん?私としては、ことりんばっかり振り回されるのは悔しいと常々思ってるんだよ。という事で、仕返ししたいと思います!」
アクアが宣誓でもするかのように、片方の腕を耳に沿って真っ直ぐ挙げて宣言した。
「あら、楽しそう。」
美羅はすでに乗り気なようで、惚れ惚れするような良い笑顔で、どうやって仕返しするのかさっそくアクアに聞き始めた。
「ことりん、パーカー私に貸して。」
言われるままに、パーカーを脱いで渡すと、アクアがそれを羽織る。
美羅と臣は、それだけでアクアの言う“仕返し”がどういうものか分かったらしく、成る程と言って何やら納得している。
「…?」
小鳥だけが、アクアが何がしたいのか全然分からない。
「尊さん、私とことりんが仲良しすぎるとやきもち妬くんだよ。」
本人は気付いてないみたいだけどと付け足して、アクアがクスクスと笑う。
「あの人、小鳥に限っては独占欲凄まじいからな。小鳥のパーカー貸すくらいなら自分のジャケットをアクアに貸したいとこだろうけど、自分のはもう他人に貸してるし、どうするんだろ。」
「あら。小鳥のためなら、あの女子からあっさりジャケット返してもらうんじゃない?」
「いや、それはあまりにもあの女子が気の毒だろう。」
「そう?貸してくれたはずのジャケットをあっさり返せって言われたら、無駄な期待も残念な勘違いも解消されてあの女子の為にもなると思うけど。」
ゼミの女子を気遣う臣を、美羅がばっさり切り捨てた。
「上着返してもらうのかは分かんないけど、薄着になったことりんを黙って見てるはずないから尊さんはこっちに来るだろうし、少なくともあの女の人からは引き離せるよー。」
やきもちも妬かせられて一石二鳥!と、アクアが無邪気に笑う。
「アクア賢い!」
美羅が、アクアと手と手を合わせてはしゃいだ。
「やきもち…妬くのか?」
はしゃいでいる所水をさすようで申し訳ないのだか、小鳥は尊が嫉妬するとは思えなかった。
アクアが好きなのは助で、小鳥が好きなのは尊だ。
それを知っている尊が、小鳥がアクアに上着を貸したくらいでやきもちを妬くとは到底思えなかった。
「分かってても妬いちゃうんだなぁこれが。」
疑問をそのまま口にすれば、ふふっと笑ってアクアが自信たっぷりに言い切る。
「まあまあ、すぐに結果は出るって。ほら、噂をすれば…尊さん、こっちに来るみたいだ。」
臣の言葉通り、ゼミの女子をかわして尊がこちらに向かってきた。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
9 / 233