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暴君との日常7
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現地で皆と解散して尊と二人になった帰り道、小鳥の携帯にラインの通知が入る。
ポロンと響いた通知音に携帯を取り出してみれば、アクアからメッセージが届いていた。
**********
ことりんは分かってなかったみたいだから教えてあげるー('ω')ノ
尊さんが、寒さ対策とか言ってことりん抱き締めてたのは、ことりんは自分のだっていう無意識のアピールだから☆ミ
私よりも自分の方がことりんと仲良しだって見せつけたかったんだと思うよー!
無意識なのが、ほんっっっと質悪いけど(/´△`\)(笑)
とにもかくにも、仕返し成功万歳\(^-^)/
じゃあまた学校でねー!
**********
「ライン、アクアちゃんからか?」
ちょうどメッセージを読み終えたタイミングで尊に声を掛けられ、頷きつつ携帯をポケットにしまった。
小鳥は歩きながら携帯の操作をするのは苦手なので、返信は家に着いてからにする。
「お前らホント仲良いなぁ。」
尊いわく、大学生メンバーは小鳥とアクアの様子を見て、二人が付き合ってるものだと皆して思っていたらしい。
「俺が否定したら、あんだけ仲良いなら付き合っちゃえば良いのにって言ってたぞ。」
からかうように笑う尊に、小鳥は溜め息をついた。
こういう事を平然と言うこの男が、やきもちなんて本当に妬いたのだろうか。
隣を歩く、小鳥の目線よりだいぶ高い位置にある尊の顔を見上げて、やっぱりやきもちを妬いて振り回されるのは自分だけじゃないかと考える。
「ん?何だよ、人の顔じっと見て。どうかしたのか?」
「……尊は、俺とアクアが付き合っても良いのか?」
いつも、小鳥ばかりが振り回される。アクアの言っていたように、たまには小鳥だって仕返しがしたい。
そんな気持ちからか、思わずポロリと言葉がこぼれた。
まあどうせ適当に流されて終わるだろうと思ったのだが、尊は一瞬、驚いたような顔をして固まった。
もしかして、少しは小鳥もやきもちを妬かせられたのだろうか。
だが、そんな期待を持てたのは、ほんのつかの間で。
尊はすぐに表情を切り替えて、余裕たっぷりの笑みで言った。
「ないない。アクアちゃんは助にベタ惚れだし。」
それにお前は俺にベタ惚れなんだろう?言葉にはしなかったが、尊の顔にはそう書いてあった。
尊の言う事はもっともなのだが、このまま引き下がるのは悔しい。
「…アクアじゃなくても…とにかく、尊以外の誰かと、俺が付き合っても良いのか…?」
苦し紛れにそう聞けば、尊はしばし考えるような素振りを見せた後、意地の悪い笑みを浮かべた。
何だろう、もう嫌な予感しかしない。
「俺の言う条件を満たすような奴なら良いぞ。」
「…条件?」
「まず、俺より見た目が良いこと。」
「…最初の条件から難易度が高すぎる。」
尊は、性格にはおおいに難のある残念な男だが、見た目は文句なしに整っている。尊を越えるとなると、すさまじく厳しい条件だ。
「俺より頭が良いこと、俺よりスタイル良くて、あと運動神経も良いこと。」
「…どんな完璧超人を探せと?」
それなりに偏差値の高い暁に、尊は首席で入学している。加えて、現役モデルで、スポーツ全般何でもこなす。
性格以外は、腹のたつくらい欠点のない男だ。
次々と困難な条件を楽しそうにあげ、尊はもう完全に小鳥をからかって遊ぶモードである。
やはり、苦し紛れの反撃ではちっともまともに取り合ってもらえなかったようだ。
「それからー」
「…まだあるのか。」
隣を歩いていた尊が正面にまわり込み、腰を曲げて小鳥と視線を合わせる。
「これが一番難易度高いぞー?」
もったいつけてそう言った後、尊は不敵に笑った。
「俺以上に、お前の事を好きなこと。」
「…~っ!!?」
不意打ちだ。
「おぉ!小鳥が赤くなってる!珍し~。お前はホント可愛いな。」
小鳥の反応に気をよくしたのか、可愛い可愛いと繰り返し言いながら、わしゃわしゃと頭を撫で回される。
悔しい。
本当にやっかいな男を好きになってしまった。
多分、尊の今の言葉に深い意味なんてない。冗談混じりに軽い気持ちで口にしたのだと思う。
分かってはいても、そんな一言で馬鹿みたいに舞い上がってしまう自分が悔しくてしかたがない。
目の前で呑気に笑うこの男は、きっと分かっていないだろう。
自分の一言一言が、どれだけ小鳥に影響を与えているのかを。
小鳥が、どれだけ尊の事が好きなのかを。
2年前、尊から差し伸べられた手をとったあの日から、尊は小鳥にとっての王様で。
いつだって小鳥の世界は尊を中心にまわっている。
名前を呼ばれるだけで、泣きたくなるくらい幸せな気持ちになることがある。
例えば世界が終るなら、最後に見るのは尊の顔が良いなんて事を、真剣に考えている。
尊が居れば他には何も要らないなんて、そんな大きな事は言えないけれど、尊の為に捨てられないものは何もない。
大事なものはいくつもある。でも、一番は常に尊。揺らぐことのない、絶対的な優先順位。
こんな気持ちが、ただの兄弟愛なわけがない。
なのに尊は、小鳥が尊を好きなのは兄として好きという気持ちを恋愛感情と勘違いしているのだと言って信じてくれない。
自分も、小鳥の事は弟としてしか見られないときっぱり断言した。
そのくせ、期待させるような言動で無責任に小鳥を振り回す。
小鳥の気も知らないで、満足そうに頭を撫でているこの男をどうしてくれようか。
小鳥は頭を撫でる尊の手をとり、一気に顔をひっぱり寄せた。
そのまま距離を詰めて、そっとキスをする。
突然のことに、尊はポカンと呆けた顔をした後「~っお前…っ!?」と動揺してほんの少しだけ顔を赤らめた。
「…ざまーみろ。」
不意打ちのキスが成功したことが嬉しくて、自然と顔が緩む。
コツンと軽く額同士をぶつけて呟いた後、固まったままの尊を置いて、先に歩き出した。
今はまだ、こんな些細な反撃をするのが精一杯。
でもいつか絶対に、小鳥が尊を好きな気持ちと同じくらい、尊にも小鳥を好きにさせてみせる。
その時がきたら、小鳥も尊を思いきり振り回して、小鳥をさんざん振り回してきた事を後悔させてやるんだと、決意を新たにしたのだった。
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