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小鳥が弟になるまで8
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訴えかける小鳥は、本当に一生懸命で。
「連絡したら、きっと姫ちゃんは、仕事を抜けて帰ってくる。だから、連絡したらダメだ。」
あぁ。だから、熱があるのを我慢して、隠していたのか。
確かに、姫子は小鳥に対して過保護なようだから、連絡したらとても心配するだろう。撮影どころではなくなるかもしれない。
仕事を放り出して帰ってくるような事はないと思うが…小鳥を溺愛しているだけに、絶対ないとは言いきれない。
「それで、体調が悪いの黙ってたのか?」
頷く小鳥を、ギュッと抱き締めた。
姫子に頼り、与えられるばかりなのかと思っていたが、小鳥は小鳥なりに、ちゃんと姫子の事を考えているのか。
「わかった。とりあえずは、姫ちゃんに連絡しない。とにかく病院行くぞ。」
そう言うと、安心したのか、小鳥がはにかむような、穏やかな表情を浮かべた。
その顔を見ていると、何だか分からないが胸がいっぱいになって。
もう一度、ギュッと小鳥を抱き締めた。
*****
「ほら、パジャマ出したから着替えろ。はい、ばんざーい。」
病院から帰ってきて、手洗いうがいを済ませた後、素早く小鳥を着替えさせにかかる。
姫子に連絡しなかった為、保険証が用意出来なかったので、尊の掛かり付けの病院に小鳥を連れていった。
顔馴染みの気の強い女医は、時間外に突然押し掛けた尊に何だかんだと文句を言いつつも、すぐに小鳥を診てくれた。
ただの風邪なのですぐに熱は下がるだろうと言われ、薬を貰って帰宅したところだ。
パジャマ姿になった小鳥をベッドに寝かせ、濡らしたタオルを額に乗せる。
「薬飲んだし、じきに眠くなるだろ。とりあえず寝てろ。」
小鳥は素直に頷き横向きで寝転がると、ベッドの端に座る尊に視線を合わせる。
「姫ちゃん、確か明日の昼頃帰ってくるんだよな?今は連絡しないけど、朝になっても熱が下がらなかったら、やっぱり姫ちゃんには知らせるぞ?」
「…絶対下げる。」
そう言うと、小鳥は難しそうな顔をして掛け布団をひっぱり上げ、すっぽりと布団に埋もれた。
どうやら、意地でも姫子には知られたくないらしい。
余程、心配を掛けたくないのだろう。そう思うと、不貞腐れた様子も、何やら健気で可愛く見える。
「…小鳥は、良い子だなぁ。」
布団から唯一出ていた雀色の頭を撫でて、ポツリと呟いた。
「~っ!?」
その途端、小鳥が勢いよく布団から顔を出した。大きく目を見開いて、何やらとても驚いたような顔をしている。
「おゎっ!?急にどうした!?」
「…今、何て…、言った…?」
小鳥は、ただただ驚いた顔をして、じっと尊を見ている。
何を、そんなに驚いているんだか。
落ちてしまった濡れタオルを拾いあげ、水の入った洗面器にひたす。
「んー?小鳥は、良い子だなぁって。」
小鳥の行動はホント予測できないな、などと考えながら、止めていた、頭を撫でる手の動きを再開させ、先程の言葉を繰り返した。
すると、見開かれた雀色の瞳が、どんどん透き通って行って…
「……~ッ。」
「んなっ!?おい!?ホント、どうしたお前!?」
参った。本当に小鳥は予測不可能だ。
ポロポロと、ガラス玉のように透き通った大きな雫が、小鳥の目から次々と溢れていく。
突然泣き出した小鳥に、尊は完全にお手上げ状態だ。
とりあえず抱き起こして、小鳥を胸に抱え、そっと顔を覗きこむ。
「小鳥、どうした??熱でしんどいのか??」
落ち着かせるように背中をトントンと叩きながら尋ねると、首をふって否定する。
尊のシャツを小さな手で握りしめ、声も上げず、ただ静かに涙を溢し続ける小鳥が酷く痛々しく感じた。
子供と関わる機会なんてほとんどない尊から見ても、小鳥の泣き方はあまりにも子供らしくない。
何で泣いているのか分からないから、掛ける言葉が見つからない。
でも、何かせずにはいられなくて、小さな体をぎゅっと抱き締める。
そのまま、トントンと一定のリズムで背中を叩いていると、小鳥は泣き疲れて眠ってしまった。
ベッドに戻そうとしたのだが、小鳥が尊のシャツを握ったまま離さないので諦める。
寒くないように、毛布を引き寄せ、小鳥と自分をすっぽりと覆った。
全く、世話係り初日からトラブルだらけだ。
腕の中の小鳥の体はまだ熱くて、熱が下がっていない事が伝わってくる。
でも、寝顔は穏やかで、尊はほっと胸を撫で下ろした。
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