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小鳥が弟になるまで9
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「いらっしゃい。」
「おー、小鳥、今日はしんどくないか??」
小鳥が熱を出してから2日後。また姫子に夜の撮影が入ったので、尊は唯原家を訪れていた。
あの日、小鳥の熱は朝には無事に下がっていた。絶対安静にする事を条件に、小鳥との約束通り熱が出たことを姫子には言っていない。
何かあればすぐに連絡するようにと小鳥に携帯の番号を教えておいたが、この2日間、連絡は来なかった。
だから大丈夫だとは思うが、小鳥は具合が悪いのを隠していた前科があるため、開口一番に体調確認をする。
「大丈夫だ。熱も、あれから出てない。」
小鳥は、尊の手をつかむと、その手を自分の額へと持っていく。
触れた小鳥の額は、確かに平熱だ。
「そっか。良かったなー。」
小鳥の頭をひと撫でしてから靴を脱ぐと、リビングへと向かった。
ソファーに荷物を置き、洗面所へと足を運ぶと、小鳥が後ろからヒョコヒョコと付いてくる。
「どうした?」
用でもあるのかと尋ねるが、小鳥は何でもないと言う。
じゃあ何で付いてくるんだと思いつつ、蛇口をひねり、手を洗った。
夕食にはまだ早いので、コーヒーでも煎れようとキッチンへ行くと、やっぱり小鳥が後から付いてくる。
「小鳥も、何か飲むか?」
「ホットミルクが飲みたい。」
「了解。」
いったい何なんだろうか。ずっと後ろを付いてくる小鳥を不思議に思いながらも、飲み物の用意にとりかかる。
姫子から、家にあるものは好きに使って良いと言われている。
キッチン用品の収納場所などは、ある程度説明を受けていたので、難なく見つけたコーヒーメーカーをセットして、棚からマグカップを二つ取り出した。
冷蔵庫から牛乳を取りだし、小ぶりな方のマグカップに注ぐ。
電子レンジの温めボタンを押して、レンジの中のマグカップが、くるくると回るのをしばし眺めた後、ぴったりと隣にくっついている小鳥に視線を移した。
キッチンを動き回る尊の後を、小鳥はずっと付いてきていた。
何か話すでもなく、ただじっとくっついてくるだけなので、邪魔でも何でもないのだが……気になる。
「出来上がったら持ってってやるから、リビングで待ってていいぞ?」
「ここに居たらダメか?」
「いや、ダメじゃないけど…」
「じゃあ、尊と一緒にいる。」
それだけ言って、尊の隣でレンジの中のマグカップをぼんやりと眺める小鳥。
その後も、小鳥はどこへ行くにも後ろを付いてきた。まるで、親鳥に付いて回る雛鳥のように。
だが、それ以外はいたって普段通りで、今も、大学の課題をする尊の隣で、小鳥は、大人しく絵を描いている。
「お前、絵書くのホント好きだなー。」
もくもくと色鉛筆を動かしていた手を止めて、小鳥が頷く。
「絵を描くとすっきりする。」
「へー。ん?何かこの色だけ、やたら減ってるんだな。」
12色の色鉛筆が収められたケースの中から、水色と青色を取り出す。
「空を描くのが好きなんだ。だから、その色はたくさん使う。」
「あぁ、それでか。」
言われて見れば、今、小鳥が描いているのも空の絵だ。小鳥の言葉に納得して、色鉛筆をケースに戻した。
時計を見ると、針はもう19時を指している。
そろそろ夕食の用意をしようと腰を持ち上げた。
用意といっても、冷凍庫にある料理を温めるだけの簡単な作業なのだが。
キッチンへと歩き出すと、また小鳥が後を付いてくる。
「用意出来るまで、絵描いてても良いぞ?」
「一緒に行く。」
何故だろう。急激になつかれてしまった。
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