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怒れる暴君4
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遠くで、ピシャンと水の跳ねる音が聞こえる・・・
何だかとても温かくて、気持ちが良い・・・
目を開けなければと思うのに、心地よい微睡みにもう少し浸っていたくて、なかなか瞼が上がってくれない。
小鳥は目をつぶったまま、ぼんやりとした思考を巡らせる。
確か六道に下着を脱がされそうになった時、急に外が騒がしくなって。
とても大きな衝突音が聞こえた直後、小鳥を呼ぶ尊の声が聞こえた。
尊が六道を突き飛ばしてくれて起き上がろうとしたけれど、体に力は入らないし、手はベッドに繋がれているしで途中で崩れてしまった。
すぐに助が来て拘束を解いて抱き起こしてくれた。頭が全然働かなくてぼーっとしていると、気づいたら助ではなくアクアの腕の中にいた。
アクアが優しい声で、もう大丈夫だよと言う。
だが、尊の顔を見て、尊に触れなければどうしても安心出来なかった。
体は怠いし、頭もぼんやりするし、正直もう眠ってしまいたかったけれど。
それでも、何とか意識を繋ぎ止めて尊の名前を呼んだ。手を伸ばすと、大きな手が小鳥の手を包んだ。
目が霞んで顔は良く見えないが、小鳥があの手を間違える訳がない。あの手は、間違いなく尊の手だ。
“大丈夫だ、ここに居る”落ち着いた尊の声に、今度こそ身体中の力が抜けて小鳥は意識を手放したのだった。
結局あの後どうなったのだろう?
ゆっくりと瞼を押し上げると、小鳥は見慣れた自宅の浴室にいた。
尊に背後から抱き締められるような形で、心地よい温度の湯船に浸かっている。
「お?起きたか?」
首を反らして仰ぎ見れば、そこには心配そうに小鳥を見下ろす尊の顔があった。
「気分悪かったりしないか?」
「…平気だ。」
まだ少し頭がふわふわする感じは残っているが、多分それは寝起きだからだろう。
小鳥の答えに、尊がほっとしたように表情を緩める。
「痛いところはないか?」
「大丈夫だ。」
「…本当は?」
尊にそっと手首を掴まれ探るような目で問われ、言葉につまる。
「……手首がちょっとだけ痛い。」
その目がさっさと白状しろと物語っていて、小鳥は小さく呟いた。
擦れた痕がくっきり付いて見た目は結構痛々しくなっているか、痛いと言っても少しお湯がしみてヒリヒリする程度で、何の問題もない。
だが尊は、小鳥が痛いのやしんどいのを我慢する事をとても嫌う。
小鳥としては、我慢できる範囲の事を、いちいち辛いと報告するのは何やら我が儘を言っているようで気が引ける。
だから、我慢できる程度の事は我慢していれば良と思う。
けれど以前尊にそれを言うと、“我慢できなくなってからじゃ手遅れなんだよバカ!”と盛大に怒鳴られた。
それでも長年染み付いた癖はなかなか抜けず、やはり小鳥は我慢できるか出来ないかで物事を判断してしまう。
そんな小鳥の我慢を尊はいつの間にか見破れるようになっていて、今日も手首の痛みをあっさり白状させられた。
「風呂から上がったらちゃんと手当てしような。」
労るように手首の痕に口付けられて、コクンと頷く。
尊の唇が触れた場所から甘い感覚が広がって、それだけで何やら痛みがマシになったような気がする。
尊は小鳥をさっきまで以上にすっぽりと腕の中に閉じ込め、抱きしめる力を強くした。
「おかえり小鳥。」
「…ただいま。」
「すげー心配した。」
「…悪かった。」
背後に居るので表情は見えないが、少し痛いくらいの力で抱きしめる尊から本気の心配が伝わってきて、申し訳ない気持ちで心臓がぎゅっとなる。
「俺が知らないうちに危ないめにあうとかホント心臓に悪い。忙しい時に心配かけたくないとか思って黙ってたんだろうけど、何かあったら絶対すぐに俺に言え。」
「…わかった。約束する。」
肯定以外の返事を許さない重たい響きの命令口調で言われ、小鳥は素直に従った。
「よしっ。」
素直な返事に納得したのか、尊はいつも通りに戻ったようだ。
小鳥もほっとして強張っていた肩の力を抜いたのだが、次の瞬間、急にくるりと体を反転させられ尊と向かい合う形になる。
「ところで小鳥、あいつに何された?」
「……。」
あくまで声は明るい。口調にも責めるような感じはない。
だが、無理矢理張り付けたような笑顔に小鳥は尊の機嫌が凄まじく悪い事を悟る。
全然、いつも通りに戻ってなんかいなかった・・・
「された事、全部正直に言え。」
「…。」
正直、あまり話したくない。
そもそも、さっき襲われたばかりの人間に、そういうデリケートな事を命令口調で問い詰めるのはいかがなものだろうか。
そんな事を思わなくもないが、何しろ相手は暴君だ。しかも今は超絶に機嫌が悪い。
「…聞いて楽しい話じゃないぞ?」
「んな事わかってるよ。いいから言え。」
ダメ元で反論を試みるも、やはりあっさり失敗する。こういう時の尊は、絶対に引かない。
「お前とあいつの間に俺の知らない事があるなんて我慢できない。全部隠さずに言え。」
そんな風に言われてしまうと、話さずにはいられなくなってしまう。
「…足触られた。」
「うん。他には?」
「…胸も、触られた…。」
「うん。他は?」
しぶしぶ白状し始めたものの尊の追求は容赦がなくて、だんだん居たたまれなくなってくる。
「それだけだ。他は、特に何もない。」
「…ふーん・・・それだけ…ねぇ…」
「……。」
もういいだろうと強引に話を畳もうとしたのだが、どうやら尊は納得していないようで。
「触られただけじゃねーだろ。」
「ーーっ!」
確かに、触られただけじゃない。肌をあちこち舐められてすごく気持ちが悪かった。
それを言うのは抵抗があって黙ってごまかそうとしたのだが、どういうわけかあっさりバレている。
「触られただけじゃ、こんな痕は付かねーだろうが。」
言いながら、指先で鎖骨の辺りをトントンと軽くつつかれる。
尊の指が触れた場所を見ると、赤い痣のようなものができていた。
「…何でこれで、触られただけじゃないって事が分かるんだ?」
浮かんだ疑問をそのまま口に出せば、尊が呆れたようにため息をつく。
「やっぱり触られただけじゃねーのかよ。何されたか全部言えって言ったよな?」
もともと悪かった機嫌が、これ以上ないほど急降下する。
小鳥は観念して、全部話した。
「…何か、あちこち舐められたり、吸い付かれたりした。」
言った瞬間、尊の眉間にくっきりと青筋が浮かぶ。顔が整っているだけに、怒った顔も迫力がある。
「くそっ!やっぱこれキスマークか!あいつ…もっと徹底的に潰してやれば良かった…」
「…キスマーク?」
地を這うような声で唸るように呟き、怒り心頭中の尊には申し訳ないのだが、小鳥には尊の言っている事の意味が分からず首を傾げる。
「その赤い痕の事だよ!吸い付かれて出来たんだよ!そういう痕の事、キスマークって言うんだよ!」
知らなかったのか!?と、なかばヤケクソに聞かれコクリと頷く。
赤い痕は、てっきり暴れた時にどこかにぶつけて出来た痣か何かだと思っていたが、そうか、これがキスマークというものなのか。
「知らなかった。だって、初めて付けられたし。」
それを聞いた瞬間、尊の表情が凍った。たがそれはほんの一瞬で、すぐに意地の悪い笑みに変わる。
この笑顔はまずい。
原因は分からないが、小鳥は何か尊の地雷を踏んでしまったようだ。
「なあ小鳥?」
「…何だ?」
「俺は全部隠さずに言えって言ったのに、お前さっき隠し事しようとしたよなぁ?」
「…。」
「お仕置き決定。」
「!?」
理不尽だ・・・・・凄く、嫌な予感がする。
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