アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
暴君の失態4
-
マンションの前でタクシーを降り、尊を引きづりながら助は小鳥の待つ部屋を目指す。
「尊、あとチョットだから。頼むから寝るなよ。」
「……。」
部屋に着く前に意識を失われてはかなわないので度々声を掛けながら進む。
もし眠られでもしたら、 180㎝を優に越える尊を助一人で運ぶなんて無理だ。
しかし助がいくら話しかけても、尊は虚ろな目をしてふらふらと歩くばかりで返事はない。
まあこの際、無視されようが足元がふらついていようが、自分で歩いてくれてさえいれば良しとしよう。
「小鳥、俺だ。着いたからロック解除してくれ。」
『わかった。すぐ開ける。』
フロントの通信機で小鳥の部屋を呼び出し、オートロックを解除してもらう。
尊も鍵は持っているだろうが、この状態では本人に出させるより小鳥に頼んだ方が早い。
すぐにロックが解除され、助は尊の肩を支えつつ エレベーターへ乗り込む。
「助、お疲れ様。…尊、おかえ…り?」
目的の階で降りると、小鳥が部屋の前で待機していた。
助に挨拶した後、小鳥は尊に声を掛けるも、その声が届いているのかは怪しくて。
朦朧とした状態の尊に戸惑ったのか、思わず語尾が疑問系になってしまっている。
「…ぐてんぐてんだ…。」
ふらふらで助に支えられた尊をしばし観察した後、小鳥はポツリとそんな感想を漏らした。
「俺もこんな酔った尊は初めて見た。とりあえず、部屋に運びこんでいいか?」
苦笑しながら尊に視線を向ければ、小鳥がドアを開けて部屋へと招き入れてくれた。
小鳥はそのまま助達を先導し、尊の部屋までパタパタとドアを開けてまわる。
どうにかベッドにたどり着き横たわらせると、尊はすぐに寝息をたて始めた。
「助、尊が手間を掛けて悪かった。」
「いやいや、社長の酒の相手一人で引き受けてもらってたしな。」
ペコリと頭を下げた小鳥の髪を撫でる。
「…あと、ちゃんと連れて帰ってきてくれて、ありがとう…。」
「ん。どういたしましてー。」
学校からの帰り道で約束した通り、今日は尊の夜遊びを無事に防げたからか、助に礼を言う小鳥は心なしか嬉しそうだ。
途中逃亡されそうになったりと色々苦労はしたものの、尊を連れ帰った甲斐があった。
いつもの無表情よりほんの少し柔らかい表情をした小鳥に、酔っ払いの面倒を見た疲れが癒されていく。
「さて、じゃあ俺は帰るな。」
「尊を運んでくたびれただろう…少し、休んでいったらどうだ?…コーヒー…は、淹れられないけど…」
「あぁ、小鳥が淹れると見た目だけカプチーノの謎の液体になるもんな。」
小鳥の家事に関する不器用さは、小学生の頃から改善されていない。
最初はあまりの家事オンチっぷりに驚いたが、すっかり慣れた今となってはそんな所も微笑ましく思っている。
「お茶…くらいなら出せるぞ?」
助のジャケットの裾を控えめに掴み引き留めてくれる小鳥に、ありがとうと応える。
けれど、せっかく気遣ってくれた小鳥には申し訳ないのだが、助は誘いを断った。
「明日も朝から仕事なんだ。今日は帰ってさっさと寝るわ。」
「そうか…大変だな。…もしかして、尊も朝から仕事か?」
「あぁ。二日酔いにならなきゃ良いけど。」
玄関まで見送ってくれた小鳥に、しっかり戸締りしろよと言い聞かせドアノブに手を掛ける。
「…助。」
「ん?」
「…ありがとう。」
「おうっ!」
呼ばれて振り返れば、穏やかな雀色の瞳と目があって。
嬉しそうな声で改めて言われた礼は、きっと酔っ払いの暴君を介抱したことにだけでなく、一晩だけとはいえ、尊の夜遊びを回避した事への感謝も含まれているのだろう。
嬉しそうな小鳥に助も嬉しくなって。
明るく一言返事をして、清峰家を後にした。
今日は良いことをしたと、達成感を味わいながら帰路につく。
この後、小鳥と尊の間でちょっとした事件が起こることなんて知るよしもないまま・・・・・
********
助が帰った後、小鳥は尊のベッドの側に座りぼんやりと整った寝顔を眺めていた。
ベッドの上に伏せた肘にペタリと頬をくっつけて、至近距離で尊の顔を覗き込む。
尊とは時々一緒に眠るが、あまり寝顔を見たことがなかった。
たいてい先に小鳥が寝るし、起きるのも尊の方が早い。
眠っていても隙のない綺麗な顔は、じっと見ていても飽きない。
そして、見ていると触れたくなる。
手をのばし、酒のせいかほんの少しだけ赤らんだ尊の頬をそっと撫でる。
そのまま指を滑らし唇に触れると、無性にキスがしたくなった。
眠っている間にするのはいかがなものかとは思いつつも、誘惑に勝てずゆっくりと顔を近づけていく。
「…尊。」
唇が触れ合う寸前に、大好きだという気持ちをたくさん込めて名前を呼んだ。
そのまま、残っていたほんの僅かの距離を詰めて、触れるだけのキスをする。
唇に伝わった心地好い体温に満足して、尊から離れようとした瞬間、
「ーーっ!?」
突然強い力で腕を引かれ、ベッドの上へと引き上げられた。
「…ッ??」
驚いて固まっていると、すっぽりと尊に抱き込まれる。
「…尊、…起きたのか?」
「……。」
呼び掛けても、応答はない。
尊は小鳥の首筋に顔を埋めたような状態で抱きついているため、顔を見て確認することもできなかった。
「……尊??」
首筋に吐息がかかってくすぐったい。
ふいに、素肌に唇を寄せられて体がピクリと反応する。
小鳥の鎖骨辺りを軽く食んだ後、ゆっくりと尊が顔を上げた。
仰向けの状態の小鳥に覆い被さるようにして、上から見下ろされる。
目が合った瞬間、小鳥は息を飲んだ。
虚ろなその瞳には、はっきりと欲情の色が滲んでいて目が離せなくなる。
こんな尊、小鳥は知らない。
「みこっ…」
名前を呼ぼうとした声は、尊に唇を塞がれて途切れた。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
87 / 233