アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
4.2
-
******
「菅野さーん」
「なに、どーしたの?」
店内のBL漫画コーナーで品出しをする女性店員が振り返る。
「今度、『りゅう』って作家さんの新刊。初回限定版で入りますよね?」
「あーうん。来週に初回限定版と通常版で発売する予定だけど。今回は予約制度が取れないことになったんだよね〜」
「えっ!マジですか⁉︎」
「そうなんだよ〜企業側が店頭販売のみにして欲しいって。下手したら、夕方までには売り切れちゃうかもねぇ…」
そう呟きながら溜息をつき、茶髪のオカッパ頭が項垂れた。
彼女の名前は、菅野姫花さん。
この書店のBL漫画コーナーが担当だ。
彼女は腐女子という生き物であって、このコーナー志望で入社した、俺の先輩である。
「あの〜菅野さん。そこで、お願いがあるんですけど…」
「え、なに?」
「実は…どうしても!その漫画が欲しいんです!先に取り置きとか、出来ませんかね?」
「…えっ?」
この大型書店は種類が充実していることで有名だ。
だけど、ひとつの漫画に対しての在庫はそこまで多くない。
勿論、客数が多いというのも理由のひとつだが…
特にBL漫画に関しては入荷数自体がかなり少ないのだ。
ましてや、店頭販売のみとなると、峰塚さんが買いに来る頃には確実に売り切れているだろう。
「お願いします‼︎」
「えっ、なに、まさかこっちの世界に目覚めたの⁉︎」
「えっ!いや、そうではなくて…」
「じゃあ、何で?」
「…えっと、」
「…あ〜なるほど〜そういうことねぇ?」
「そういうこと…?」
「あの、黒髪スーツの男の人に渡すんでしょ?」
「えっ、あー…まぁ、そんなところ…です」
俺が少し恥ずかしそうに答えたその言葉に、菅野さんは目を輝かせて俺を凝視する。
こんな生き生きとした菅野さん、初めてみたぞ。
ちょっと怖いと思ったのは、黙っておこう…。
腐女子は、みんなこういう生き物らしいし…。
「っていうか!もしかして!」
「え?」
「もしかして、2人って…!」
俺の顔をキラキラした瞳で見上げてくる。
うわああ、顔が近い近い。怖い怖い。
そういえば、この人はリアルの男同士でもイケる人だったっけ。
峰塚さんの場合は二次元の男同士は好きだけど、リアルは好きじゃないって言ってたな…。
ということは、そういった中でも種類が分かれてくるのか…。
「2人って、付き合ってるの⁉︎」
「っ、え?」
目をキラキラさせ、鼻息を荒げて、俺の肩をこれでもかと揺すってくる菅野さん。
って…俺が⁉︎峰塚さんと⁉︎
ないないない、それは絶対ない‼︎
いくら、あんなに可愛い顔してて、優しくて、頼りになっても、向こうにはそんな気ないだろうし!
そもそも。峰塚さん、リアルは断固拒否してるし…!
だから俺がいくら思っても…!
……って、え?
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
7 / 22