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日曜の朝。部活がない日のこと。
ぴーんぽーん。
家のチャイムが鳴ると、家族の目線がチャイムに向く。
「誰だろ、こんな朝早くから」
「お母さん見てくるから火見ててね」
「うん」
母さんがリビングから出ていき、玄関にいく。
俺は母さんに頼まれたとおり、魚の火を見ていた。
パチパチと、火花が飛び散りながら魚は、どんどん生き物だった原型を失われていく。
魚、嫌いだな。
「なお、大変!」
母さんの珍しい悲鳴に似た叫び声。
「なに、母さん」
「雅也くんが!」
雅也が…?
母さんが玄関に行くと、雅也は玄関先に脱力して立っていた。
絶望した顔で。
どうしたのかと思い、母さんが事情を聞くと、雅也は
「耳が、聞こえません」
とだけ、言った。
母さんはその様子を読み取り、雅也を家にあがらせた。
「ストレスによる…難聴だって」
雅也は、表情を暗くさせながら…呟いた。
俺は、ひどくショックだった。
メモ用紙に、
「なんで、突然?」
と書く。
雅也はそれを見ると首を横に振った。
どうやら、自分にもわからないらしい。
「ストレスって、まさかいじめた奴らのせいで…」
「………………………ちゃった。」
「え?」
「聞こえなくなっちゃった。何もかも。俺への悪口も、周りの音も。唯一俺の生きがいだった直樹の声も。全部。」
雅也は、ボロボロ涙を流す。
雅也が泣くの、、初めて見た。
直樹は、雅也を安心させるため、抱きしめてあげようと近寄るが…
「雅也くんっ…!かわいそうに」
先に母さんが雅也に抱きついた。
雅也は、母さんを抱きしめて安心したのか赤子みたいにエンエン泣いている。
俺はただボーッとしてた。
雅也の…耳が聞こえなくなった…?
「なんで、だよ。」
俺は呟いた。
なんで、雅也なんだよ…!!
『だって耳聞こえなくなったら…直樹のコエ聞こえないもん…?』
聞こえなくなる前は…あんな簡単に言えたけど。
今ならそれだけじゃないだろ。
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