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冷たいビール 睦月純也
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駅近の大きなホテルのロビーを抜けてエレベーターに乗る。
「ここ……」
「覚えてるか?」
もちろん。
懐かしい。宗介さんが付き合う前に連れて来てくれた
ビアガーデン。
あの日が大きなキッカケだった。
「宗介さんがゲロった日だね」
「睦月、もう少しロマンチストに会話出来ないの?」
「よく言うよ。ゲロの途中で告った人が」
「あれは…まあ、あれで懐かしい思い出だな」
あの日、ホテルの部屋に連れ込まれるんじゃないかドキドキしてた事良く覚えてる。
今も変わらず俺はあんたにドキドキしてる。
そんな事言えねぇけど……
屋上に着くと梅雨も空けたばかりのせいか、モワッとした空気に身体が汗ばむ。
夕暮れ前、あの日と同じ。
裸電球がいくつも連なってオレンジ色の光を放っている。プラスチックの白いテーブルと椅子には平日にもかかわらず、サラリーマンで賑わっていた。
俺たちが通された席からは、小さいこの町の夜景が見える位置。まだ明るい中、すでにネオンは点灯し始めていた。
あの日と似た様な席。
あの日と変わらない睦月さんが、あの日と同じ目で俺を見る。
「おまたせしました〜生ビールですっ!」
テーブルの上に置かれたジョッキはキンキンに冷えて、縁には氷がうっすら着いていた。
「うまそ〜。睦月、お疲れ」
「宗介さんもおつかれ」
カチンッとジョッキを持ち上げて乾杯した。
ゴクゴク飲む宗介さんを横目に俺もビールを飲む。
「ぷはーっ!」
見ると3分の1は飲み込んている。
「睦月ん家で汗かいたかんな、ビールめちゃウマ」
ひひひ、と笑う宗介さんの顔は先程の緊張感から開放されていつもの見慣れた宗介さんなのに胸が高鳴る。
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