アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
target4-6.遊園地
-
容姿端麗で、それぞれのオーラを放っている面々は人混みの中でも一際目立っていた。
「璃空様!これに一緒に乗ろっ!」
メリーゴーランドを指差し、郁は弾んだ笑顔で振り返る。
「…ッ触るな」
「恋人同士は手を繋ぐのが当たり前だろう」
しかし、目に映った光景にピシリと固まる。
近距離で話す美男子は、周囲の視線をも集めてしまう。
それを知ってか知らずか口論は続く。
「そんな関係有り得ねぇんだよ、永久的に」
「そう恥ずかしがるな」
「お前、耳機能してんのか」
まるで会話にならない。
呆れ果てていた時、前方から殺気立った視線が送られてくるのを感じた。
目をさらに吊り上げて思い切り睨み付ける郁と目が合うと、璃空の手を振り払い別の方向を向いた。
「颯都はオレとこっち行こうか~」
「はぁ!?何でお前と…!」
いきなり昶が颯都の手を引いて歩き出そうとする。
振り払おうとするがスルリと避けられ、してやったりの笑みで笑われた。
今度は璃空に右手を掴まれ、拒否反応で鳥肌が立っている颯都を挟み言い争いが始まった。
「ふざけるな。颯都は俺が貰う。
お前はそこら辺でこっちを見てる女子でもとっ捕まえて遊んでろ」
そこら辺、で璃空は顎を灼る。
昶はそれに対し、舌を出して颯都を抱き寄せ抗議した。
「イヤだね~!会長よりも、オレといた方が楽しいに決まってんじゃん!」
すると璃空は颯都を抱き寄せ返し技を掛けると、耳許で囁いてみせる。
「颯都。俺の方が好きだと言え。言えたらご褒美をやる」
「ウソだぁ~!会長を好きなワケないじゃん!
颯都はオレが好きなんだよね~?」
双子の歓声と、周りにいる人々からの喚声が止まらない。
付き合い切れない馬鹿げた口論に巻き込まれ、公衆の面前で恥をかかされる苛立ちをひたすら溜め込んでいた颯都は、無意識に行動を起こした。
璃空の手を振り解き鳩尾を殴り込み、左足で昶の急所を蹴り上げ、ウザったい二人から解放される事に成功した。
無意識の行動は見切れなかったのか、昶もまともに食らって地に伏せる。
郁が悲鳴を上げて璃空に駆け寄るのも気にせずに、一人で歩き出す。
兎に角、この場所から一刻も離れたい。
頭のネジが何本も外れている連中と一緒にされるのは勘弁して欲しかった。
ブラックの缶コーヒーを自販機で買い、適当なベンチに座る。
「(…彼奴らと一緒に居ると、無駄に疲れるな)」
コーヒーを一口飲み、息を吐く。
「そんな怖い顔してると、誰も近寄りたがりませんよ」
皮肉と共に、誰かが隣に座る。
誰かは気配で分かっていた。
羽織と袴という和装姿の副会長、京弥だ。
顔は合わせずに、再びコーヒーを口に含む。
苦さが心地良い。
「ほっとけ。元々こういう顔なんだよ」
「…にしても、早速騒ぎを起こすなんて流石ですね」
「文句なら彼奴らに言えよ」
やはりわざわざ棘のある言葉を言いに来たらしい。
生徒会は全員が我が強く、話すと口論になる確率が高い。
また口論になるかと思っていたが、意外にも京弥は諦めて嘆息した。
「そうですね…会長と一緒にいると、トラブルが絶えない」
首を捻り京弥を見ると、相当苦労してきたであろう事が表情から伺えた。
「だろうな。けど、態々彼奴に着いていく必要も無いんじゃねぇか?」
自ら進んでトラブルを巻き起こす、歩くトラブルメーカーといれば疲れるだけではないか、と考えた颯都が問う。
京弥は珍しく、歯切れの悪さを見せた後、ややあっと首を振った。
「いえ…腐れ縁が鬱陶しく思う事もありますが…信頼していますから」
サァッと一陣の風が通り抜け、髪が靡く。
「…へぇ。お前も変わり者だな」
「そうかも知れませんね」
変に突っかかっていた壁が取り払われ、不思議と二人共笑えた。
そこに、一部始終の場面を目撃し、見るからに不機嫌な璃空が現れる。
「おい。行くぞ」
集合場所に行くと、ご立腹な郁は颯都を、昶は璃空を睨んで立っていた。
椅子には楽しそうに話す双子が座っている。
颯都に気付くと、嬉しそうな表情で駆け寄ってサイドから腕に絡んでくる。
「ねーねー、颯都兄~!」
「みんなでこれに乗ろうよ~っ!」
同時に指差したのは、遥か頭上から地面に向かって一気に落ちていき、悲鳴が迸るジェットコースター。
その速度と高さはかなり怖いと知られていて、沢山の観光客の訪れる人気のアトラクションだ。
ほう、と口角を上げた璃空に対し、昶はくるりと反対方向を向いた。
「は、颯都。あのコーヒーカップとか楽しそうだよね~。
一緒に乗ろうか」
引きつった笑顔で颯都の手を引こうとするが、京弥が目が笑っていない笑顔で立ち塞がる。
「勝手に単独行動を取るのはよくありませんね…昶君?」
「で、でもさ~、ちょっとくらいは大丈夫なんじゃない?ほら!携帯あるし!」
明らかに挙動不審な昶。
三人は目を細め、双子と郁は目を丸くする。
「お前…怖いんだろう?」
「はぁ!?こ、怖いワケないじゃん!」
「じゃあ何で挙動不審なんだよ」
璃空と颯都から責められ、真っ青な顔の昶は遂に白状した。
「あぁ~……怖いよ!!あんな高いトコから落ちて…もし風で吹き飛ばされたら!?落っこちたりしたらどうすんのさ!?」
(あ~あ…カッコ悪)
(ちょっと、カッコ悪いとか言った!?結城ちゃん!)
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
41 / 108