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target4-14.変化
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[雪斗side...]
最近、颯都の色気がさらに増してきた気がする。
というのも、全身から香るいい匂いも強くなっているし、なんというか…雰囲気が艶っぽいのだ。
吸血鬼の五感は人間の何倍も鋭い。
視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚、第六感など。
どの感覚が秀でているかというのはそれぞれ違っていて。
これらは人間から血を貰い、生存競争に生き残るために狩りをする中で強くなっていったと、伝書には書いてあった。
まぁ単に、俺が颯都さんを好きで毎日様子を観察してるからというのもある。
様子が違うように感じる度、何かあった?と聞くけれど、いいや何も、と返ってくる。
それに、毎日と言っていいほど前より眉間に皺を寄せている。
何かにイライラしているのは確かなんだろうけれど。
今聞けば、逆鱗に触れる気がするし。
気になるけど、深く追及すれば颯都が嫌がりそうだからあまりしたくない。
だから現在は、傍観しているという訳だ。
今日も庶務をしながら、いつものように颯都の様子を覗き見ていた。
…それにしても。
ふとした仕草や表情が、得も言われぬ色気を醸し出している。
あ、今も。
ため息を吐く表情すら、悩ましげで。
こういう表情を見る度に、別の感覚が疼く。
あの時の出来事が脳裏をよぎって、慌てて頭を振り思考を逸らす。
こういう変化に気づいているのは、俺だけじゃないと思う。
周りの見る目も、性的対象として見ている目が明らかに多くなった。
本人が気づいていない分、俺が邪な視線を散らしてはいるけれど。
危険な事に変わりはない。
そうしている内に書類整理が終わり、書類を持って立ち上がる。
「あっ、颯都!俺がまとめて書類届けるから、今日は先に上がって?」
「けど、お前だけに…」
「いいから。俺の仕事だし。行くのはついで」
「…無理はすんなよ?」
「…ありがと」
心配そうに見る表情に微笑み返すと、渋々といった様子だったけれど折れてくれた。
危ない、危ない。
生徒会室に颯都一人で行かせるのは危険極まりない。それだけじゃない。
色気だだ漏れな颯都が一人で行動していれば襲われるんじゃ…と、俺の心配事は尽きない。
「颯都」
「…あ?」
ドアに手を掛けた颯都が振り向く。
「気をつけてね」
「…あぁ」
怪訝な顔をして出て行く颯都を見送ってから、止まっていた書類整理に取りかかった。
―――――――…
―――
―――――……
ロッカーでジャージに着替えた後、颯都は体育館に来ていた。
突然奥から飛んできたバスケットボールをキャッチすると、奥にいた短髪の男が片手を上げた。
「よっ、五十嵐」
「瀬川(セガワ)」
快活な笑顔を見せる男に、素早いチェストパスで返す。
「今日、やってくか?」
「あぁ」
昼や放課後はよく、他の部活動に参加してはスポーツに明け暮れていた。
気分が晴れない時は特に頻繁に出入りしている。
「おーい、みんな~!強力な助っ人のご登場だぜー!」
大声に、皆が振り返って颯都に気付く。
「止めろって、其れ」
「なんだよ、いいだろ?結構、買ってるんだぜ?お前のこと」
バスケットボールを人差し指で地球儀のように回しながら愉しげに言う様子に、颯都も嫌な気は起きなかった。
「よっし、やるぞー!」
瀬川の声を開始の合図にホイッスルが吹かれ、サーブを打って試合が始まった。
(何処にでも有り触れた、こんな日常で良い)
(非凡なんて、真っ平だ)
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