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target4-24.隠し事
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「(…何度も同じ手に掛かって堪るかよ…!)」
冷静さをかき集め、手に意識を集中させる。
研ぎ澄まされた神経が、掌の中に氷の刃を形作っていく。
牙が抜かれた瞬間、"それ"で璃空の頬を切りつけた。
頬に一筋の血が流れ、痛覚を感じ取った璃空が手で拭って見ると、赤い血液が付着していた。
状況判断がまだ追い付かない璃空の懐に入り込み、強く固めた拳で鳩尾を殴った。
最後に肩を思い切り突き飛ばし、部屋から脱出した。
苛立ちを隠せない足取りで自分の寮へ向かう。
まだ、噛まれた痕が疼く。
それに加え、クラクラと眩暈がする。
「(…くそ…、何だってこんな目に…最悪だ。俺が弱くなってんのか…?…いや、身体が鈍らねぇようにはしている筈だ。
彼奴らもしつけぇんだよ。何度も餌扱いしやがって…、くそ。
血が…足りねぇ)」
フラつく足許で自室の前まで辿り着き、カードキーで鍵を開ける。
靴を脱いで揃え、自室に入ろうとした。
「颯都?」
物音で気付いた雪斗が自分の部屋のドアを開けて顔を出す。
「あぁ…只今。じゃ…」
振り向きもせず部屋に入ろうとする颯都の腕を掴み、顔を覗き込む。
「顔…青いよ。大丈夫…?」
「…平気だ」
眩暈が、治まらない。
(あぁ…頼むから。)
「どう見ても平気じゃないよ。今日ブラッド飲んだ?」
身体の中の血は冷めているのに、鼓動だけがヤケに騒がしい。
(近くに来ないでくれ。)
「颯都…?、わっ…と」
突然ぐらりと傾き、倒れ込んだ颯都の背中を抱き留める。
「ほら。無理しすぎなんだよ、颯都は…」
…抑えが、効かなくなる。
颯都が俯いた顔を上げる。
息は熱に浮かされたように荒く、その眼は…いつか見たように赤かった。
それを問おうとする前に、首筋に牙が深く刺し込まれた。
「っあ!」
「ん…っ、はぁ」
すぐ傍で喉を鳴らし、血を飲む音が聞こえる。
いつも余裕のある颯都が、こんな行動に走るなんて…。
驚きもあったが、それより求められた嬉しさの方が大きかった。
血を飲み下す颯都の肩を支え、吸血を受け入れた。
初めて血を啜られた。
もっとおぞましく不快なものかと思っていたのに…感じるのは、ただただ快感だった。
好きな人に求められている…幸福な気持ちが雪斗の胸を満たす。
この感覚が、ずっと続けばいいのに…そう思っていた時、牙が抜かれた。
荒い息も徐々に落ち着いてきた頃、額を首筋に寄り掛けたまま呟く。
「……、悪ィ…」
冷静さを取り戻した颯都は、衝動を抑え切れずに突発的な行動に走ってしまった事を悔いる。
雪斗の視覚で、颯都の覗いた首筋から牙が刺さった痕が見えた。
「…噛まれたの?」
「…別に。大した事ない」
余程深く牙を差し込まれたのか、二つの点がくっきり残っている。
傷痕を指でなぞると、肩がピクリと揺れた。
「血、足りなくなるくらい飲まれたんだ…大丈夫?」
「もう平気だ。お前こそ…」
「俺はなんてことないよ。それより颯都…」
「…お前に話せる事は何も無い」
説明を求める視線を感じ、それに気付かない振りで雪斗から離れ、部屋に戻ろうとした。
しかし、腕を絡め取られて身体をドアに思い切り押し付けられる。
「…分かってる。会長…でしょ?」
俯いていても、颯都が驚いているのが空気で判った。
(俺が何も気付かないと思った?)
(気付いてたよ……気付いてた)
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