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target5ー26.疲労
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颯都は、文化祭を前にして疲れ果てていた。
昨日、体力を使い果たした状態で発情した雪斗に襲われ、翌朝起きると更なる疲労感と自己嫌悪が待ち受けていた。
問題や様々な苛立ちが多過ぎて、何の苛立ちなのか判別がつかない程だ。
…兎に角、風紀を立て直す以前に、妨害してくる奴らをどうにかしねぇと。
俺の身が持たねぇ…。
思考を進めながら、廊下を進む颯都の歩みが無意識に苛立たしげになる。
風紀を正す。平穏な生活を送る。
それを邪魔する者は、誰であれ敵だ。
「…知らねぇのかよ!?あの噂!!」
途中、耳に入ってきた大声に耳を傾ける。
「天下の風紀委員長は、もっぱら受けだって噂だぜ!!」
「いや、あり得んだろ!」
「マジなんだって!その証拠に、アイツの雰囲気…前よりエロいだろ」
「…確かに!」
「あー!一度ヤってみてぇー!!」
「ムリだろー、お前じゃ!オレがヤるんだよ」
ギャハギャハと下品な盛り上がりを見せる男達の後ろに、黒い影が近付く。
「…誰が誰をヤるって……?」
「決まってんだろ、オレらが委員長…を………」
軽く答えると、背後に異様な殺気を感じて恐る恐る振り返る。
「…てめぇら、余程ぶっ飛ばされてぇらしいな」
「ヒッ…」
絶対零度の眼で睨まれた男達は、まさに蛇に睨まれた蛙。
引き吊った悲鳴を洩らし後退ると、背を向けて何か叫びながら一斉に逃げ出していった。
その姿を眉間に皺を寄せて見ていた颯都が溜め息を吐く。
…最近、どうもこういう類いの噂が飛び交っているのが、苛立ちを加速させる要因だった。
潰しても、次から次へと噂の種が発生し、切りがなかった。
今は遠巻きに見てくる視線すら煩わしく、颯都が視線を投げると逃げるように散り散りになっていった。
「(…面倒臭ぇ)」
苛立ちを振り切るように進行方向へ歩き出したが、気分が良くなる訳でもない。
「おーい、五十嵐~!」
後方から、聞き慣れた声がした。
臆病だったが立ち止まって振り向く。
「丁度いい、文化祭の道具取りに行くの手伝ってくれ」
「…俺以外に使える奴居ねぇのかよ」
「ん~?五十嵐だから頼りにしてんだぞ~」
「……、嘘臭ぇ」
琉生の悪気のない笑顔を見て悪態を吐くが、何だかんだ言っても手を貸してしまうのだった。
荷物を取りに来たのは準備室。
琉生にはここでの雑用も頼まれるが、荷物運びも多い。
机の面が見えなくなる程積み重なったファイルや書類、棚には段ボールなどの荷物が置かれたままになっている。
こうも狭く感じるのは、琉生の適当な性格の所為だと颯都は思っていた。
颯都はキレイ好きな為、隙を見ては何となく片付けてしまうのだが、毎回こうも見事に散らかっていると最早突っ込む気も起きない。
無言でいち早く片付けに取り掛かった颯都を見て、琉生から呑気な声が上がる。
「いや~、助かるな~」
そうして颯都は片付け、琉生は運ぶ荷物を確認していった。
それぞれの作業を淡々と進めていた時、ふいに琉生から声が掛かる。
「…なぁ、五十嵐。お前、ムリし過ぎじゃないか?」
「…別に、俺が気になるから遣ってるだけだ」
「そうじゃない」
唐突の言葉に作業を続けたまま何気なく答えると、即座に琉生が言い直す。
金色の眼が、颯都を捉えた。
「俺が言ってるのは…もっと周りを頼れってことだ」
「…はぁ?」
益々、何の話だか分からない。
「今余裕無いって顔してる。のに、一人で気張り過ぎだ」
…少し、驚いた。
まさか指摘されるなんてな、と髪を掻く。
「あぁ…そうだな。顔に出さないよう気ィ付ける」
「…五十嵐」
再び作業に戻ろうとした颯都を、琉生の腕が抱き締めた。
「ムリすんな。何かあったら俺に言え。…なっ?」
髪を撫でる手。
その優しさに、心が小波のようにざわめいた。
一瞬それに甘えてしまいそうな感覚に戸惑い、颯都は琉生の身体を押し返した。
「誰が頼るか。ホスト教師!」
(ほーんと、五十嵐は素直じゃないなぁ)
(…うっせぇッ)
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