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十四。
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「で、お前は例の十二支と大喧嘩して此処に来たと。」
「…………………。」
あの後冬護が真っ先に向かったのは、知り合いの男が経営している居酒屋だった。
居酒屋といっても、内装は高級日本料理店のような造りで客は認められた者しか入れない会員制の店。
今いるのは冬護だけで、店はほぼ貸切状態となっている。
どう見ても居酒屋じゃないだろと言いたくなるが、店主が居酒屋というのだから居酒屋なのだ。
その男の名は、毘月 焔(ひづき ほむら)。
冬護と同じく現役の月華だ。
ガタイがよく筋肉質で、切れ長の目と刈り上げた短髪が特徴の男。
赤の色が強い赤茶色の髪は、まるで炎のように強烈な印象を残す。
「別にいいんじゃね?お前、あの十二支と一緒にいるの嫌がってたじゃねーか。
むしろ自由になれてラッキーだろ。」
「そんな簡単に片付けられる話じゃない。もしアレが狩人に殺されたら、俺は狂って死ななきゃいけないんだぞ。
それは俺にとって恥でしかない。」
日本酒を飲みながら、冬護は不機嫌そうに頬杖をついた。
その様子を見ながら、焔はため息をつく。
「なんやかんやお前、その十二支…慎太郎くんだっけ?気に入ってるんじゃねーの。」
「は?」
「俺の知ってる稲月 冬護ってのは、プライドだけで生きてる冷徹人間だ。
そんなお前が、気に入らねぇ奴と運命を共にするってなったらどうするかねぇ。」
焔はふいにタバコを取り出し、火をつける。
煙を取り込むように息を吸い、ゆっくりと息を吐き出した。
もやもやとした白煙が、ゆらゆらと空気に漂う。
「俺がお前だったら、さっさと自決して縁を切るけどな。」
タバコを持ちながら、焔がニヤリと笑った。
「生きることより、プライド優先だろ。お前の場合は。恥晒しと一緒にいるなんて、普通は耐えられない話だ。」
「…………………。」
そう言うと冬護は、嫌そうに顔を顰める。
「……この俺が、あの雑魚気に入ってるだと?」
「そう。だって大喧嘩した理由も、その慎太郎くんが他の奴と話してるのが気に食わなかったんだろ?
それってさ、明らかに"嫉妬"じゃねーの。」
「……………………。」
タバコの灰を落とし、焔はもう一度タバコを咥える。
「それにさお前嫌々言ってる割に、慎太郎くんの側から離れねーじゃん。
お前彼の月華になって何年目よ。5年くらい経ってるだろ。
5年も一緒にいるって、好きじゃなきゃ出来ねーよ。」
「………違う。」
「へぇ、別に違うなら違うでいいけど。」
焔は煙を吐き出し、タバコを灰皿に押し付けた。
すると彼の隣からひょっこりと、テディーベアのようなモジャモジャ頭が飛び出る。
「………タバコくさい。」
そう言って出てしたのは、眠そうな目をした童顔の青年。
彼は鼻をつまみながら、嫌そうに眉をしかめた。
「……焔、タバコ吸った。俺、タバコ嫌い。イコール焔嫌い。」
そう言って彼は焔のそばを離れようとする。
「わぁぁ、実里(みのり)嘘だろ!?ごめん、もう吸わねーから!!」
焔が慌てて灰皿ごとゴミ箱に捨てると、青年はひらひらと手を振った。
「バイバイ、焔。俺実家に帰ります。」
「それは絶対許さねー!!」
焔が背後から抱きつく青年の名は、弘前 実里(ひろまえ みのり)。
彼は十二支の一人で、本当の漢字は"未紀(みのり)"と書く。
彼は今、居酒屋を営む焔の手伝いをしている。
と言っても、彼はただ焔のそばで昼寝をしているだけだが………。
「とにかくだ。俺はお前らが仲直りしよーが破滅しよーが関係ない。
俺はコイツの側にいれれば、それでいいし。」
グイッと未紀を側に引き寄せた焔は、自信満々でそう言い放った。
それを冬護は呆れた目で見る。
「はぁ……、そうかよ。すぐブチ切れて破壊衝動に走る問題児が、ずいぶん丸くなったな。」
「いや、今も抑えられないぞ?ただ実里が側にいれば、それが落ち着くだけだ。」
「………気持ちわり。」
そう言い残し冬護が席を立つと、焔がこう言い返した。
「お前もいつか、そうなるかもしんねーぞ。」
それを聞いて冬護は一瞬足を止める。
だがすぐに動き出して、冬護はその場を去った。
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