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十七。
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ーーー
冬護が慎太郎のそばを離れて3日。
「おはよう、名鳥。葵さん。」
慎太郎はいつもと変わらない笑みを浮かべていた。
「……おはよう、慎太郎。」
「おはようございます…、慎太郎さん。」
名鳥たちより早めに起きていた慎太郎は、私服に着替え台所に向かっていた。
「ちょっと待ってろよー。今、朝ごはん作るからさ。」
そう言って慎太郎は歩いてる最中、置いてあったゴミ箱を蹴ってしまう。
ガコンッ
「あっ、やべ!」
倒れたゴミ箱を慌てて立て直す慎太郎。
ガシャンッ
「うぉっ!?」
その次は野菜の皮を剥こうとして、包丁を流し台に落としたり。
ガシャーーンッ
「うぉあっ!!」
その次は空になった食器を洗おうとして、皿を割ってしまったりと……。
とにかくそんな災難が多く続いた。
「ご、ごめん…!いま片付ける!」
慎太郎が慌てて割れたガラスを拾おうとする。
しかしそれを名鳥が遮った。
「っ、」
「大丈夫。あとは葵が片付けるから。」
名鳥がそう言うと、葵が慎太郎の肩に手を置いた。
「え、でも………。」
「俺はこうゆう作業慣れてます。安心してください。」
「いやいや!俺も手伝うよ!」
慎太郎も一緒になって作業しようとするが、それを名鳥に止められる。
「っ、」
「慎太郎は僕と少しお話をしよう。」
真剣な顔をした名鳥が慎太郎の手を掴むと、そのまま部屋の隅に移動した。
名鳥が壁際に座ると、その隣をポンポンと叩く。
「はい、慎太郎はこっち。」
慎太郎は戸惑いながらも、名鳥に誘導されながら隣にちょこんと座った。
視線は2人とも部屋の方に向いていて、お互い顔の様子がわからない。
「単独直入に聞くけどさ、
慎太郎って冬護さんのことどう思ってるの?」
「えっ……。」
突然放たれた言葉に、慎太郎は思わず声を出してしまう。
「好き?それとも嫌い?」
その言葉に慎太郎の顔からは汗が噴き出した。
「そ、それはその…、一体どちらの意味で……。」
「どっちも。人間的な意味もあるし、恋愛的な意味もある。」
「!?」
ズイッと顔を突き出して、名鳥は慎太郎に迫る。
「僕思ったんだけどさ……。」
コソリと名鳥は慎太郎の耳に囁いた。
"君たち、実は恋愛的な意味で好きなんじゃないの?"
「は、はあぁぁぁっ!?」
名鳥のとんでもない発言で、慎太郎は驚き目を剥いた。
「いや、ないない!俺はあるかもしれないけど、あの人に関しては絶対ないって!!」
とても大きな声で否定すると、近くにいた名鳥は思わず耳を塞く。
「っ、慎太郎声大きい。」
「あ、ご…ごめん……。」
名鳥は耳から手を外し、ニヤリと笑った。
「でも慎太郎は好きなんだ。冬護さんのこと。」
「いやっ、だからそのっ……そうじゃなくて…!」
汗だくになりながら、必死に否定しようとする慎太郎。
「そんな必死にならなくていいよ。これは誰にも言わないから。そもそも言う相手なんかいないし。」
「……………………。」
少しの沈黙があった後、慎太郎はそっと顔を埋めた。
「…………………………なんで分かったんだ。」
「うーーん。確信的だったのは、冬護くんが去った後の慎太郎の反応かな。
あれは流石に分かりやすい。バレバレだよ。」
「え、マジで!?」
顔を勢いよく上げ名鳥を見れば、彼は呆れた目で慎太郎を見る。
「だって普通あんな嫌味ったらしい人が出て行ったら、清々するでしょ。
でも君は酷く落ち込んで悲しそうだし、家事はミスばかりするし。むしろ冬護くんがいた時の方が元気だったよね、君。」
「うっ…!」
「葵もそう思ってたから、相当だよ。」
「!!」
そう言われて、慎太郎は台所でガラスの処理をしていた葵と目が合った。
ニコリと笑う葵に、慎太郎の顔はどんどん赤くなっていく。
「っ、うぉぉぉ………。」
「その気持ちバレたくなかったら、今後気をつけなよー?」
名鳥が慎太郎の眉間を人差し指でグリグリした。
「うわぁぁぁ……!やっちまったぁぁ……!」
慎太郎は顔を手で押さえ、唸るように叫ぶ。
「そんなに落ち込まなくてもいいんじゃない?十二支が月華に恋するなんて、結構メジャーだし。
むしろ無い方が珍しいというか……。」
「え、そうなの!?」
「だって僕たちを見てごらんよ。」
「あ………。」
確かに、そう言われてみるとそうかもしれない。
現に名鳥と葵さんは恋人のように仲が良いし、実際恋仲だと思う。
それに智絵さんや八月さんだって、いつも仲睦まじく夫婦のように一緒にいる。
ーーーそれが、本来の十二支と月華のあり方。
それを見て慎太郎は、いつも羨ましく思っていた。
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