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三十三。
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*
すると金髪の少年は、大笑いながらそれを否定した。
「あははは!ちっげーよ!俺たちそんな弱いヤツらじゃねーし!」
金髪の少年は、自分の肩に大きな金棒を担いだ。
「俺たちは新月会の幹部、月影のメンバーだ!」
(……しんげつかい?……げつえい?)
慎太郎が心の中で呟くと、金髪の少年は堂々と自分に指を差す。
「俺の名前はミカヅキ。そんでこっちは、同じメンバーのトウヤだ!」
「よろしくお願いします。」
まるで学校の中で話しているような、幼い喋り方。
しかし彼らの身なりを見れば、それが普通でなかった。
「俺たちの目的はただ1つ!宇都宮 名鳥の殺害と十二支の名前、"酉"の奪還だぁぁ!」
「っ!!」
"宇都宮 名鳥の殺害"
それは慎太郎の予想と違っていた。
宇都宮家と繋がっているのなら、
彼らは名鳥を連れ戻して閉じ込めたいはず。
何故なら名鳥が十二支として、宇都宮家の神として、崇められている存在だから。
しかし新月会の目的が、
"名鳥の殺害"と"名前の奪還"だと話は違ってくる。
(宇都宮家の中で、違う目的を持った奴がいる……。)
きっとソイツは宇都宮家当主の座を狙っていて、その後ろ盾である十二支を新たに立てようとしているんだ。
そしてそれをしようとしてるのは、1人しかいない。
「……名鳥様の叔父である男が、お前たちの依頼人なのか。」
「……………………。」
葵が目つきを鋭くさせて、
唸るように静かに問い掛けた。
「………名鳥様を殺し、新たな後継者を立てることが奴の目的なんだな。」
葵の雰囲気がみるみる黒く恐ろしいものになっていく。
それを見ながら、トウヤはニヤリと笑った。
「さぁ?それは私たちの機密事項なので話せません。」
ヒュッッ!!
葵は素早い動きでトウヤに近づく。
彼の首を掴み、コンクリートの柱に押し付けた。
ドォンッ!!
隣にいたミカヅキは口笛を吹きながら、後ろを振り向く。
「すげ、今の速すぎて見えなかった。」
ギリギリと葵は強い力でトウヤの首を締め上げる。
名鳥が真っ青な顔でそれを見つめた。
今すぐにでも葵の名を呼んで引き止めたい。
でもそれをしたら、正体がバレて計画が失敗してしまう。
「…………っ、」
震える手を握りしめながら、彼はジッと葵たちの様子を見つめていた。
「葵さんっ……!!」
慎太郎が腹部を抑えながら叫ぶと、彼は振り向かずゆっくりと喋り始める。
その声は怒りを抑えたものだった。
「慎太郎くん。……私は、ここで彼らを止めます。その間に、名鳥様を連れて逃げてください。」
「っ!!」
「必ず戻りますから。大丈夫です、私を信じて。」
葵は殺気立った目で、トウヤを睨みつけた。
「………それに私は、この人たちに聞かなければならない事がある。
それを聞くまで、私は貴方たちと一緒に行けません。」
新月会が一体何者か分からないが、この雰囲気だけで分かることがある。
"コイツらは、月華と同等の強さを持っていること"
きっと6人で逃げても、結末は失敗に終わるだろう。
なら私がここで、その不安要素を確実に摘んでやる。
もし万が一、出来なかったとしても時間稼ぎくらいにはなるだろう。
ーーーだから慎太郎くん。どうか名鳥様を……
「……っ、嫌だと言ったら!!」
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