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四十三。
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*
「……………………。」
その問いかけに、冬護は何も答えない。
「…………なんで、何も言わないんですか……?」
慎太郎の顔から、だんだん血の気が失われていく。
僅かに笑っていた口角も、次第に下がっていく。
「……何か、言ってくださいよ………。」
慎太郎の顔は困惑し、震える声で喋り続けた。
口調が段々早くなり、彼の中で焦りが募っていく。
「ビルが倒壊し始めてる……。何してるんですか。
はやく葵さんを連れて来ないと…。彼、瓦礫に潰れて死んでしまいますよ……?」
「………………………。」
何も言わない冬護に、慎太郎は彼の肩を強く叩いた。
「なんで何も言わないんだよっ!!」
「………………………。」
すると冬護は俯いた顔でこう呟く。
「………頭月 葵は、死んだ。」
呟かれた声と共に、慎太郎は目を大きく見開いて呆然とする。
「………助からなかった。」
その言葉は鈍器のように重く、慎太郎の頭を強く叩く。
「………は?………なに言って………。」
冬護の言葉を信じきれない慎太郎。
ザリッ
何も言わず走り出した冬護に、慎太郎は焦りだした。
「何してるんですかっ……!?下ろしてくださいっ!!俺が葵さんを連れてきます!!彼は絶対に死んでないはずだっ!!」
無言で走り続ける冬護に、慎太郎は冷や汗をかいて舌打ちをする。
「だからっ…、離せって言ってるんだよっ!!!」
本気で暴れて冬護の拘束を解こうとするが、彼の力が強すぎてそれが出来ない。
「っ、」
ガッッ
慎太郎は冬護の頭を思いっきり殴った。
脳震盪を起こす勢いで、彼は容赦なく拳に力を入れる。
ガッ、ガッッ!!
冬護の頭から血が流れ、慎太郎の拳も皮膚が破け血が滲み出した。
ーーーーしかし、それでも冬護の拘束は外れない。
冬護の額から、血が流れ落ちた。
「………お願いだ、慎太郎。」
「っ……!!」
初めて冬護が自分に頼み事をした。
それは傲慢な声ではなく、とても悲しげな声で……。
(なんで…っ…、何でこんな時にそんな声を出すんだよっ!!)
慎太郎の目から、ボロボロと涙がこぼれ落ちる。
「………すまない。」
彼から聞いたことがない、謝罪の言葉。
「すまない慎太郎……。俺はお前まで失いたくないんだ。」
それを聞いて、慎太郎は顔を俯かせて泣いた。
声を必死に押し殺し、黒剣を持つ手は血管が浮き上がるくらい強く握りしめる。
その力強さは、彼の激しい怒りを表していた。
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