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四十四。
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「ーーーーー♪ーーーーーー♪」
流れる風と共に、男は屋上から鼻歌を歌った。
癖のあるシルバーブロンドの髪を靡かせながら、望遠鏡で遠い景色を観察している。
「んーーー、なるほど。綺麗な景色だ。」
そう言って精悍な顔立ちをした男は、後ろにいる小さな少年に極上の笑みを浮かべた。
「ほら、お前も見てごらん。とても透き通った青い海だ。きっと感動するよ。」
その少年は内気な目をしていて、口元には白いマスクをしている。
さらにコートの襟で、その容姿を隠した。
彼は挙動不審な行動をとりながら、一生懸命男に喋る。
「い、いえ…ボクは大丈夫です。……ボクは美しい貴方の姿が見れれば、それで十分なので……。」
彼は挙動不審な行動をとりながら、一生懸命男に言葉を伝える。
それを聞くと、男はとても満足そうに笑った。
「そう。なら問題ないか。」
ドサッ
彼は肩にかけていた黒いボストンバッグを、無造作に床へと落とす。
そしてその中から、黒いスナイパー銃を取り出した。
「さてと。明日も朝からモデルの仕事があるし、早く済ませようか。」
男は目を細め、遥か遠い下町をジッと見つめる。
「アイツだってもう、指定位置についてるだろ。」
ザッッ……
透き通った大空の下。
白い鴎が広大な空を、優雅に飛びながら鳴いた。
人気のない下町に、茶色いボブの髪型をした少女が歩いている。
手には晴天なのにも関わらず閉じた傘。
「…………………。」
少女の目はとても鋭く、視点はただ一点に絞られていた。
ーーーーーー
ーーー
「……………。」
慎太郎たちと別れ、智絵たちは目的地である港に向かっていた。
距離はもうあまり遠くなく、数分もすれば簡単に着く距離。
「この町を抜ければ、目的地だ。」
智絵がそう言った瞬間、八月は何か不気味な気配を感じた。
彼は急に立ち止まり、小さな街並みをグルリと見回す。
その様子に気づいた智絵が、動きを止めて彼に問いかけた。
「……八月、…この近くに敵がいるのか?」
「……分かりません。でもさっき、僅かに人の気配を感じました。」
すると八月の目に、とあるものが留まった。
それは目的地である港の方角。
大きく開けた街並みに、とても小さくではあるが一つの人影があった。
「っ、」
名鳥はそれを見ると、躊躇ったように一歩足を後ろに下がらせる。
「………あれは……、」
智絵も八月の視線を辿って、その小さな人影を捉えた。
彼が目を凝らして見ようとした時、八月は素早くコートの中から武器を取り出した。
「……二人とも!下がってください!!」
ジャラッ……
鎖で繋がれたバラバラの鉄の棒。
その先端には大きな刃がつけられている。
ヒュンッ
それを一振りすると、バラバラだった鉄棒が鎖によって引き寄せられていく。
ジャキンッ
そしてそれは一本の薙刀に変わった。
ガキンッッ!!!
その瞬間、小さかった人影は一瞬にして間合いを詰め
た。
八月の薙刀と交えるのは、一本の傘。
力強さは互角で、ギリギリと2人の手が震えている。
「……お前は…、あの男たちの仲間か…っ……。」
向かい合う少女に八月が問いかけると、彼女は何も答えなかった。
ヒュッ
代わりに彼女は八月と一旦距離を置く。
そしてゆっくりと、彼女は傘の持ち手を引き抜いた。
「……違う、貴方は鳥じゃないわ。」
そこから現れたのは、美しい白銀の刃。
「……私が狩りたい獲物じゃない。」
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