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五十二。
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*
ーーーーー
ーーー
あぁ、楽しい。
なぜこんなにも、悲劇は楽しいのだろうか。
「ーーーーー♪ーーーーーー♪」
怪しい夜に、ビルの一室。
薄暗い空間で、陽気な鼻歌が聞こえた。
プロジェクターから反映される壁の巨大モニター。
そこに映し出されたのは、赤い血溜まりと白い羽。
中央に置かれたデスクには既に勝負のついたチェス盤と、名鳥の写真が載った資料が置かれていた。
彼の顔には、大きく赤のバッテンが施されている。
"全員俺が、地獄にぶち落としてやる!!!!"
「………ふふ。」
その叫び声が聞こえた瞬間、黒神はニヤリと笑った。
「あぁ…、いいね……。」
高揚した声で、彼はポツリと呟く。
憎しみの籠った青い目が、モニター一面に飾られる。
「やはりトウヤに任せて正解だった。こんなにも面白い展開に持っていくなんて、君は天才だね。」
黒神がそう言うと、彼の背後にある暗闇からトウヤが出てきた。
「お褒めに預かり光栄です。黒神さん。」
彼は嬉しそうに微笑み、黒神に向かって丁寧なお辞儀をする。
映像は終わったのか、モニターの画面が真っ白になってしまった。
「ーーーーー♪ーーーーーー♪」
黒神は鼻歌を歌いながら、チェスの駒を弄ぶ。
カーテンのない窓から外の景色が見えた。
灰色の雲が浮かぶ夜。
ゆっくりと風と共に動く雲は、やがて隠していた月を明かしていった。
ーーー青白い光を放った月。
その光がビル全体の暗闇を、微かに照らしていく。
ーーーー
ーーーーーー
真っ暗だった暗闇は、
やがて人影へと変化した。
ーーー黒神とトウヤを含む12人の影。
背丈はバラバラで、性別も体型もそれぞれ違う。
姿は逆光でハッキリと見えず、ただ暗い人影として佇んでいた。
「……二条 慎太郎!今度こそアイツは、オレが仕留める!」
頭に包帯を巻き付け、ひどく憤る少年。
ーーーミカヅキ
「へぇ、そんなにすごいヤツなのかよ。俺も戦ってみてーな…。」
ギラついた目で舌舐めずりをし、指を鳴らす少年。
ーーージョウゲン
「……………。」
不機嫌そうな顔で、縫合された腕を撫でる少女。
ーーーマチヨイ
「オレはクロガミさんの、シジに従ウだけ。」
カタコトの言葉を喋りながら、腕を組む大柄な少年。
ーーーボウ
「うふふ。ミカヅキとマチヨイは、自分の力に過信しているからこうなるんですよ。
もう少し慎重に動いてみたらどうですか?」
おっとりとした声で微笑む、メイド姿の少女。
ーーーイザヨイ
彼女の言葉に反応して、ミカヅキはイザヨイに楯つく。
「専門外のお前にいわれたくねーよ!」
「あら、そうですか?でも最終的な目的は同じですよね。"殺し"という部分に関しては。」
「はぁぁっ!?」
ミカヅキがイザヨイの胸倉を掴もうとした時、彼の頭に勢いよくナイフが刺さった。
ーーーカツッ!
「うるさいよ…、2人とも。もうちょっと静かにしてもらえない?黒神さんに失礼だよ。」
「そうだよ…、僕らだって眠いんだから。耳が痛い……言い争うなら、もう少し小さい声で喋って。」
眠そうな顔で、ミカヅキにナイフを向けた小柄な双子。
ーーーイマチ、ネマチ
「み、ミカヅキくん、イザヨイさん……。落ち着きましょう…。僕たち今黒神さんの前にいるんですよ…?」
オドオドとした声で喋る、マスクをした少年。
ーーーハツカ
「ハツカの言う通りだ。この場に黒神さんがいるんぞ。少し落ち着こうじゃないか。」
人柄が良さそうな笑みで接する、背の高い美少年。
ーーーカゲン
「もーー。このままじゃ話、全然進まないじゃないですか。僕早くゲームしたいんで、いい加減争いはやめましょう!じゃないと進まない!ね?ね?」
ゲームキャラクターのキーホルダーを沢山つけて、皆をなだめる黒縁メガネの少年。
ーーーアリアケ
「ミソカも立ち尽くしてないで、何か言ってやってよー!」
「…………………。」
アリアケの言葉に微動だにせず、その場で立ち尽くす白髪の少年。
ーーーミソカ
彼の顔には虎のお面があり、黒神は"カイ"と呼んでいる。
「あはは、皆まだまだ元気そうだね。よかった。」
黒神は後ろを振り向こうとはせず、ニコッと笑った。
「でもごめんね。君たちと話す前に、先客がいるんだ。」
正面にある黒い扉をジッと見つめながら、黒神はそっと目を開く。
その目はとても冷たく、しかし口元は僅かに笑っていた。
「……その人と話をつけないと、進まないんだよね。」
ーーーー聞こえる。
あの扉の向こうで、重い足を上げながら階段を上る男の吐息が。
ーーーー感じる。
これが終われば、
物語は新たな展開に進むのだと……。
「……さぁ、はやく。」
淀んだ雲が再び、青白く輝く月に覆いかぶさった。
「はやく、こっちにおいで。」
黒い影が、笑みを浮かべながら手招きをする。
"さぁ、準備はできてるよ"
"早く僕に、新しい悲劇を見せて"
時計の音を聞きながら、全ての視界は黒い扉とドアノブだけになった。
ーーーーーー
ーーーー
ガチャリッ、
真っ黒な画面に、ドアノブを回す音が響く。
ーーーーーー
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