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しばらくして、何本かタバコを吸い終わった隆虎さんは、タバコの火の後始末をしながら俺にこう話かけた。
「そういえば。楓は今日の夜…その予定とかあるかい?」
「…予定ですか?…特にはないですが」
「そうか。なら…楓さえ良ければ、少し星を見に行かないか?」
俺の返答にそう返しながら、隆虎さんは俺の右手を優しく掴んだ。
「えっ…その。あの…困ります」
突然のことでパニックになった俺はそうシドロモドロになりながら答えると、
隆虎さんは一瞬だけ、機嫌の悪い表情を見せたが。
すぐさま愛おしいものを見るような顔を浮かべ、
俺の右手の甲にまるで騎士が主君へと捧げるようなキスを落としながら。
「俺では…駄目か?」と弱く呟くように言った。
俺は普段とはうって変わったその態度に、胸をぎゅっと掴まれたような気持ちになって。
ドキドキする心臓を落ち着かせながらこう返した。
「分かりました。…今日は11時に締めるので、店の裏で11時30分ごろ来てください」
「楓、ありがとう」
俺の返答に満足した隆虎は握っていた手を離しながらそう言い、
続けて。
「…きっと寒くなると思うから、冷えない格好で来るんだよ」と付け加えるように言いながら。
「じゃあ楓。11時30分になったら向かいに来るからな、途中で行けなくなったとかは…絶対にするなよ」と最後は茶化し気味に言ってから、隆虎は席を立った。
「ええ、分かりました。…ちゃんと行きますから、隆虎さんも俺のことちゃんと迎えにきてくださいね」
「ああ、もちろん。俺は約束だけは必ず守る男だから、安心しろよ」と、
そう言いながら隆虎さんは懐から財布を出し、そこからお札を一枚だけ出して。
飲み終わったカクテルグラスの横に静かに置きながら、そのまま俺の方を振り向くことなく出て行った。
--俺はただただ出て行くそんな隆虎さんに。
「ありがとうございます。星見るの楽しみです」と、
言うことしか出来なかった。
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