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疵(きず) 17
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アノ人にもう一度 直接スマホに
電話をしてみようか。
いや 止めようか。
どうしようか。
疼くような 焦燥。
俺はというと
毎日決まった時間に起きて 顔を洗い朝食を モソモソと流し込み 着替えて 自分の車に乗り込み 会社に向かう。
細心の注意を払って 与えられた検体を扱っていく。丁寧に手を洗い着替えて 職場を後にする。
いつも同じスーパーで食材を買い 帰宅して 食事の支度をする。
穏やかな うんざりするけど 変化の無い平穏な日々。
それは 退屈では有るが 自分の瑕疵を 忘れる日々。
男漁りにも 似た日々は 嫌でも自分の身体を念頭に置かねばならない。
ちょっぴり刺激的で 俺を称賛する 薄っぺらな言葉は 一時的にしか 俺を癒してくれない。
以前はそんな一時的な称賛が欲しくて
次々と見知らぬ人間に 半端な己を晒した。
だが しょせんは 俺のすべてを知らないうわべの 言葉。
俺の一部だけを見ているだけだ。
最初に 良い処だけ見て貰うから その後の失望の視線が 怖い。
最初に極上だと誉めそやされるから 奈落に落ちるのが怖いのだ。
俺は 最低の 雑草だと 認めて晒せば 良いのか?
しかし
瑕疵を晒すのは
身を切られる程 切なく辛い。
秘匿してきた 瑕疵は
最低の評価を下されるだろう。
泥にまみれて 地べたを
這い回る 勇気が
俺には
無い。
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