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疵(きず) 20
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居酒屋に入ると ひとしきり 客も途絶えたのか 店内は空いていた。
いらっしゃいませーと 何人ものスタッフが迎えてくれた。
「あのー 連れが 先に来ている筈ですが」
承っております。こちらへ
と一番奥の上がり框から 靴を脱いで 更に奥の襖を開けて案内された。
おずおずと入ると 座卓の奥に 眼鏡を掛けたスーツ姿の男がビールを片手に
「先に飲んじゃってるよ」
とジョッキを捧げるように持ち上げた。
アノ人 だ。
促されて向かいに腰かけて取り敢えず
「俺もビールを」
と注文を待っていた店員に告げる。
ビールが届けられて
ジョッキをカチンと合わせた。
「魚は大丈夫?照り焼きと刺身とサラダを頼んであるよ。」
何か初めて会ったような気がしない。
メールだけとはいえ 2年もの間 本音で話してきた間柄だ。
「千春君は 仕事は何処まで行っているの?僕はね S市までなんだ。普段車なんだけど 今夜は地方出張の帰りだから 電車。」
「俺は 市内だけどアミューズメントパークの近くまで。車で通っています。夏は混むので時々電車で。。仕事は 医療関係って言うか 検査技師です。でも病院じゃなくて 検査機関で血液検査や尿検査 病理分析とか。たまにレントゲンとか。」
「あぁ じゃあ 勤務先によっては 血液採取もMRI CT 内視鏡分析とかも だね?」
「よくご存じですね。もしかして医療関係のお仕事?」
「うん まぁね。」
「君は 独り暮らしなの?」
「はい。両親は健在ですが 父の仕事の関係で海外に居ます。今住んでいるマンションは両親が頭金を出してくれて 残りのローンは俺が。賃貸で充分だったんですけど、両親とも日本に戻る気が無いのか 帰国したときに 遠慮なく帰れる自宅が欲しかったみたいで。」
なんで こんなことまで 話してしまうのだろう?
この人に 俺のことを知って欲しいからか?今まで どんな男にも 仕事や住む処の話なんてしたこともなかったのに。
これから話すことの 前哨戦として 知って欲しいからか。とにかく 余計なことを話していると 思われただろうか。
「ねぇ?千春君。敬語はやめようよ。
そんなに年齢違わないだろう?」
それから たわいのない 話を して 食べて 飲んで 笑って
久々に 楽しかった。
アノ人は 俺よりひとまわり 大きかった。背も高そうだし 何より胸板も厚そうで そしてイケメンだった。
眉毛がキリッとして 鼻筋も通って くちびるがやや厚いが 形の良いくちびる。
穏やかに話す声も心地よい。
何より笑うとドキッとするほど 惹き付ける何かが有る。
真っ直ぐな視線で見られると 居たたまれない。
自然と顔が赤らむような気がした。
俺 どうしちゃったんだろう。
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