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疵(きず) 42
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途中 ファミレスで朝食を食べて 着いた病院はとても大きな病院だった。
真弓さんの指示に従って職員用の駐車場に止めた。
本当の玄関は2階に受付が有るらしい。
「僕の親友がね この病院の副院長。その親父さんが院長なんだ。僕はここの整形の医師なんだよ。
さぁこっちの方から入るから。」
半地下まで下がって職員専用口から入ると外の喧騒が嘘のように静かだった。
廊下を歩いて行くと 向こうから白衣を着た人が 真弓 と手を振った。
真弓さんはそれに応えて 俺の手を引っ張っていく。
「千春。彼は僕の親友の片岡正之。
正之。彼は僕の大事な千春。」
正之と呼ばれた人は 真弓さんに負けず劣らず背も高く医師にしては穏やかな スポーツマンタイプの爽やかな人だった。
「君が千春ちゃんかい?よろしくね。」
差し出された手に応えて握手をすると にこやかに笑った。
真弓さんが言っていた通り 俺を見ても 顔色も変わらないし 普通に接してくれた。その正之さんが
「お前の部屋に衣装がおいてあるから頼む。11時の回診のとき一緒に回る。
10分前に迎えに行くから。」
「わかった。」
そう言うと正之さんは忙しいそうにあたふたと踵をかえし 駆け出していった。
俺は真弓さんに促され真弓さんの更衣室兼仮眠室も兼ねた部屋に通された。
その部屋には正之さんが用意したらしい仮装衣装が2着ハンガーに掛かっていた。
俺は その日 真弓さんに頼まれて 小児科病棟で 仮装して 子供達にお菓子を配る仕事を頼まれたのだった。
今日10月31日はハロウィン。
医師と看護師はカボチャの帽子。彼らと一緒に 衣装を着て子供達に楽しく過ごして貰おうというイベントらしい。
寝たきりの子供や人工呼吸器のままの子供。髪の毛が抜け落ちている子供。無菌室越しの子供。肢体不自由児の病気による入院。生まれつきの疾病、事故、様々な子供。
毎週何かしらのレクリェーションを兼ねたイベントはやるが やはりクリスマスやハロウィン 雛祭り 七夕等々 イベントは子供には欠かせない 楽しみになる。
子供の病状、年齢、に鑑み 部屋毎 いや患者毎に テンションを考えなければならない。
看護師は子供にも人気だが 外部の人間との接触も 子供には新鮮な刺激で 退屈な入院生活には 欠かせないものだ。
医療関係者である俺は うってつけの 怖くないドラキュラ担当らしい。真弓さんも非番だが、子供達のために一肌脱ぐらしい。
まぁ 真弓さんと一緒ならと俺も軽く引き受け 友達にも 紹介したいからって 真弓さんの言葉も嬉しかったから。
病棟をまわって 特に問題もなく 子供達も喜んでくれたし その付き添いの親達も盛り上がってくれて 中々良いイベントだったと思う。
ドラキュラの、衣装のまま 真弓さんの親友の正之さんに挨拶をして 帰途についた。
一応似合いもしない口元の付けひげは取ったが 黒いマントと贋のシルクっぽいドラキュラのまんまだったが 今日ハロウィンだから そんな衣装でも良いよ。
と真弓さんの言葉に従って そのまま 運転して帰ってきた。
俺の家に着いたのは午後も早い時間で、総合病院の感想とか 夕飯の相談をするかと、思っていた俺は ヨミが甘かったのだった。
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