アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
千春オジサマ 壱
-
千春side
その日 いつものバーに顔を出して 軽く飲んだあと 家路についた。
まわりの店はもうシャッターが下りている商店街の路地を歩きながら 時計を確認した。
今の時間なら 今日のうちに帰れる。
別に日付を越えても どうということはないが 午前様にならないように帰る と自分に課している。
駅までの 路地裏を歩きながら 木枯しに寒気を覚えて襟を掻き合わせ マフラーをしてくれば良かったと 舌打ちした。
昔はマフラーなんか嫌いだった。しかし亡くなった祖母が言っていたよなぁ。襟元暖めればセーター1枚着たのとおんなじ。冬は襟巻きしていきな!
イマドキ襟巻きとは言わないし。
あぁ 俺も トシかー。
風に吹かれて寒いなんて
マフラーが欲しいなんて。
自嘲しながら 足早に歩く。
すると くしゃみが出そうになる。
は は はっくしょん!
すると すぐそばで 誰かが くしゃみ。
少し遅れて千春も はっくしょん!
それに呼応するように 近くで はっくしょん!
つられた訳では無いが 千春も再びはっくしょん!
向こうもはっくしょん!
くしゃみの二重奏かよ。
なんだか可笑しくて 忍び笑いを漏らすと すく近くで やっぱり 笑い出す声。
ははは
ははは
くしゃみだけじゃなく 笑うタイミングまで 同じかよ。
ほろ酔いの気分も手伝って なんだか くだらなくて 更に笑ってしまう。
くしゃみの音がする方へ目を向けると 何処かの店が仕舞い忘れたプラスチックの酒のケースの上に座っていた奴が 背中を丸めて笑っているのが 視界に入った。
千春もひとしきり 笑ってその男に近づいて
「寒いのかよ?」
と声をかけた。
すると
「あんたも寒かったのか?」
顔をあげたのは まだ子供かと思うほど 幼さの残る 男だった。
それが 真弓との 出会いだった。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
167 / 264