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千春オジサマ 弐拾壱
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或2人の会話
千春の家は千春には冷たい家でね。
家族は父親と母親 そして15も年上のニート引きこもりの兄貴。
父親は元エリートだったらしいけど 早期退職で家に居たよ。俺らが中学生の頃にはね。
千春の両親は しばらく子供が出来なかったらしくて やっと授かった千春の兄貴を甘やかして 溺愛して。溺愛っつうか猫可愛がりして。
その結果甘やかされた兄貴は引きこもりのニートさ。
そして
千春は
父親が他の女に生ませた子なんだよ。
千春の存在が諸悪の根源だって家族が皆考えていたらしくて 千春はよく言えば放任主義 言い替えると存在そのものを無視されていた。
千春の母親が本当の母親じゃないって分かったのは 千春が独り暮らしを始めていた大人になってからだけど。
でも 小さいときから 千春は生まれてこなければ良い存在と言われていたらしいんだ。
そんな日常 想像出来ねぇよ!
そうだろう?
そして
結果から言うと
千春は
家族の悪いことが重なったとき
家族が精神的に弱っていたとき
混乱して
錯乱した
母親から 包丁で 切りつけられたのさ。
お前が居たから って。
傷は深くは無かったけど
千春は 避けなかったんだ。
壁に顔を張り付けるように立って
背中に 切りつけられた。何ヵ所も。
あのとき
千春は
自分が要らない存在で
育ての母親から
居なくなってよ
って言われて
そのまま
動かずにそれを受け入れようとした
顔も見たくないから
背中を向けろ
って 言われて
包丁を構えた母親に
無防備に背中をさらして
切りつけられるまま
痛みに耐えたんだ。
痛みっつうか
殺されようとして
背中をさらした。
そのそばで
ニートの兄貴は
笑って見ていたらしい。
服が包丁で破れ
皮膚が見えて
切られて肉が裂け
ババアの力だから
深くはないが
縦横無尽に
縦に 横に 斜めに……
何針縫ったかな。
おかしいって
千春のあとを追って
俺が 家に駆けつけたとき
千春は 背中を血だらけにして
壁にすくっと
立っていた。
やめろ
って
俺が 叫んで
ババアから包丁を取り上げた。
ババアは
そのとき やっと我にかえって
ぶるぶる震えて 床にしゃがみこんだ。
そのあと
白く浮腫んだような兄貴ってのが
ババアを罵って
早くも責任回避していた。
何も知らねぇ
ババアが勝手にしたんだ
って
俺は
直ぐに救急車を呼んで
ババアと白豚みてぇな2人を
睨み付けて
千春を
抱き抱えた。
その途端 千春は
気ィ 失っちまったけど。
それまでは
壁に張り付くように立っていた。
俺は
黙っていたんだけど病院から警察に連絡がいって。警察が家に駆けつけた時には ニートの兄貴と母親は 生きていなかった。
家は 火の海で。
家は丸焼け。
ババアと白豚兄貴は焼死。
過失か放火か いまだに不明だ。
父親はその頃老人ホームみてぇな施設に居たんだけど 認知も入っていたのかな?
傷は全部浅かったから
わりと早く退院した。
内臓までは傷つけてなかったからな。
それから千春は 仕事も辞めて 酒浸りの毎日さ。まともじゃ居られないだろ。
母親だと思っていた人から 血ィ繋がってないって言われて。
死ねと言われて育てて貰った母親から何度も何度も包丁で切りつけられて。
挙げ句に精神に異常をきたしていたのかわからねぇが2人は焼け死んで。
残った父親から
母さんは?兄ちゃんは?って
繰り返し繰り返し 聞かれて。
千春は被害者なのに。
酒に逃げるしか
ねぇだろ。
脱け殻みたいに
寝て
起きて
酒 飲んで
俺は千春に飯を食わせて
千春は寝て
ぼーっとして。
わりと俺は
自由な時期で
ずっと千春と
千春の家に居た。
離れられる訳ない。
目を離せなかった。
普段陽気な千春が
何もしゃべらない。
それでも
飯だけは食わせた。
機械みたいに
死んだ目になっていたなぁ。
俺がすることに
抵抗も 肯定もしない。
泣くことをしない赤ん坊みたいだった。
あの頃の
千春は。
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