アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
兄
-
あれから二週間ほど経つが、優くんは毎朝1人で玄関を出ていく。少し経てばまた一緒に登校してくれるのではないか、とそんな淡い期待を抱いたりもした。
いつも「いってきます」と笑顔で出ていく優くんを見つめるたびに、切なさが積もる。
「…真咲?次移動教室だぞ」
「…っ、今行く」
心ここに在らず、という状態が続いていた。
授業に身が入らないのはもちろんのこと、階段から落ちそうになったり、何も無いところで転んでしまうことが増えた。
心配そうにこちらを見つめる達也に少し申し訳なく思う。
「あ~、うん、屋上いくか」
「へ?」
「次数学だし、1回ぐらいサボっても平気だろ」
「…達也は結構サボってんじゃん」
久しぶりに笑みがこぼれた。
授業中の廊下は、普段とは違う静けさに包まれていた。
何百人という生徒がいるこの学校に、こんな静かな空間があるのかと疑ってしまうような。
階段を登りきり、少しさびたドアノブを回す。
それは何かを拒むように重たかった。
フワッと香る、秋の匂い
目を見張るほどの晴天だった。
遅れて入ってきた達也が何かを投げた
驚きながらも受け取ると、それは俺の好きな……
「あなたのバナナオレ……」
「それ買うの結構恥ずかしいんだからな…」
と、ぼやきながら自分用のカフェオレにストローを刺し、胡座をかいた。
つられるように、その横に座る
その瞬間、むにっと両頬を驚くほど強い力で引っ張られた
「いっ!いはいいはい!はなへ!(痛い痛い!離せ!)」
「辛気臭い顔のヤツが隣にいたら、辛気臭いのがうつるだろ」
そう言ってさらに強く引っ張られる。
「ほへんって!!!(ごめんって!!)」
パッと手を離され、ジト目で睨まれる。
先程まで引っ張っていた頬を、いたわるように両手で包み込まれた。そのままぐにぐにと両手を動かされる。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
27 / 42