アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
兄
-
とにかく一度、落ち着いて考えよう。
そう自分に言い聞かせる。
通りすがる学生達からの怪訝な視線に耐えながら、なるべく人気のない場所を求めて歩いた。
そうしていると、一層広い空間に抜け出た。
天井は吹き抜けになっており、そこからの光を吸収し木々が青々と茂っている。
太陽に味方されながら、キラキラと光る噴水に思わず目を奪われた。
「…きれい」
そっと近づき、絶え間なく流れ続ける水に目をやる。荒んでいた心が浄化されるような、そんな美しさだった。
張り詰めていた気持ちがスッと緩む。
思わず泣いてしまいそうになって、ギュッと唇を噛み締めた。
泣きたいのは、優くんの方だ。
俺自身に泣く資格はない。
一刻も早く謝ろう。
今日は俺がご飯を作って、一緒に食べよう。
それにはまず優くんを探し出さなくては。
もう一度そう決心し、歩きだそうとした時だった。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
31 / 42