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五人目のあとに
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彼は必死に笑った。
優男には誰より幸せであって欲しかったから。
相手の女にも笑った。
嫌いになりたくなかったから。
そうして何年も過ごしていると、彼の優男への感情は
ただ一つの恋から、家族…兄に対する思いに変わった。
「私のロゼッタ」
そう呼ばれるだけで嬉しかった。
相手の女は貰わなかった、弟への愛。
彼には姉はたくさんいたが、弟は彼だけだった。
それだけで、良かった。
数年過ぎて、優男は病気になった。
彼は急いで駆けつけた。
現れた彼に、優男は女を部屋から出して二人きりにした。
「私のロゼッタ」
弱い、小さな声で、彼を呼んだ。
「私はね、君を愛していたんだ。ごめんね」
それだけ言って、優男はこの世を去った。
彼は気付いた。まだ、自分は優男を一人の男として愛していたのだと。
笑う相手もいない。愛していた相手もいない。
彼は抜け殻のように、余生を過ごした。
ただただ、優男が謝った理由を聞きたいと考えながら。
「次がどんな名前でも、私はロゼッタと名乗りたいな」
それが彼の最期の言葉だった。
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