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season #5
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「わかったよ……何?」
「え?ここで?」
ポニーテールが4人を見ながら、デリカシーがないと言いたげに修を睨みつける。
「ここじゃなきゃ聞かないよ。」
修は食べ終わった弁当箱を片付けながら、チラッとポニーテールを見る。
「ね、こんなやつ、やめちゃいなよ。」
ポニーテールが、一緒にいたおとなしそうな子の顔を覗き込む。
おとなしそうな子は、おずおずと顔をあげる。
今にも泣き出しそうな顔で、ポニーテールを見ると、首を振って修に向き直る。
「あ……あの……す…好きです!…き…気持ちだけ…伝えたくて……。
あ、ありがとうございましたっ!」
それだけ言うと、突然踵を返し、一目散に走り出した。
「え?あ、ちょ、ちょっと待ってよ!」
ポニーテールも急いで後を追いかける。
カシャ。
和哉が修に向かってシャッターを切る。
「ちょっと悪いことしたなって思ってる顔、いただきました!」
和哉がカメラから顔を外して、ニヤッと笑う。
「お前な~。」
修が和哉にくってかかろうとするのを無視して、和哉は智に向き直る。
「智、笑って。」
智はふふっと笑ってレンズを見る。
カシャ。
「修ちゃんも、ちょっとはジュン君を見習った方がいいですよ?」
「そうだよ、そうだよ。あれじゃ、女の子が可哀そうだよ。」
雅範が、デザートのオレンジを智に差し出しながら言うと、
自分もパクリと一つ口に入れる。
「修ちゃんさ、そっと周り見回してごらん。」
淳一が顎をクィッとあげて、周りを促す。
修がゆっくり周りを見回すと、知らないうちに生徒達が5人の周りを囲んでいた。
チラチラ見る者、じっと見る者、隠れて見る者が2、30人。
それぞれで、遠巻きに5人を見ていた。
「何?これ?」
修は戸惑ったような、困ったような、不安げな顔で、淳一に向き直る。
「中学では5人で集まること、あんまりなかったからね。
でも、俺達、みんなの注目を集めるんだって自覚しておきな。」
「どうしてこうなった?」
「何言ってんの。修ちゃんもジュン君もモテモテだったじゃん。」
雅範がお弁当を片付け終え、二人を交互に見る。
「そういう雅範が中学では一番人気でしたけどね。」
和哉がニヤリと笑う。
「カズだって、先輩に告られたり……。」
雅範は顔を赤くする。
みんな、和哉の話を思い出したのか、顔を見合わせ赤くなる。
「おいらはあんまりそういうのないなぁ。」
智がポツリと言うと、修は身を乗り出して否定する。
「そんなことないよ。」
「そうだよ。半分以上、みんなで握りつぶしてるんだから。」
雅範はそう言ってハッとする。
しまったと、口を両手で隠した。
「握りつぶす?」
そこへ、男子生徒がやってきて、智の隣で止まった。
「あの……小野寺君。」
「ん?なに?」
「俺の絵のモデルになってください。」
男子生徒は深々と頭を下げる。
「モデル?モデルって脱いだりとか?」
淳一が眉尻を上げて、男子生徒を見つめる。
「断る!」
修が声をあげる。
「智は私の専属モデルですから。」
和哉が冷ややかな視線を浴びせる。
「脱ぐなんて、絶対ダメ!」
雅範が大声で叫ぶ。
男子生徒は4人の気迫に押され、一歩後づさる。
「あ……おいら、モデルじゃなくて、描く方だから……。」
みんなの勢いに押されながら、智はニッコリ微笑んだ。
男子生徒は智の笑顔にホッとして、
「今じゃなくても、いつか、モデルをお願いしたい……ダメかな?」
顔を赤くしながら、真剣な目つきで智を見る。
「ダメです。」
修が男子生徒を睨みつける。
「修君!」
今にも飛び掛りそうな修を制し、智が優しく言う。
「おいら、やっぱりモデルなんて無理だよ。ごめんね。」
「そっか。でも、俺、諦めないから。」
男子生徒はニッコリ笑って智を見ると、じゃ、と手を挙げ、校舎の方に帰って行った。
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