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season #8
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6月に入る頃、修に彼女ができた。
修にとっては初めての彼女だ。
噂はすぐに広まった。
「ねぇねぇ、修ちゃん!本当なの?」
雅範がいつもの木の下のテーブルで、修を見つけるなり、目をまん丸にする。
「何が?」
修はミートボールを口に運びながら、そっけなく答える。
「だから!彼女!」
「修ちゃんが彼女!」
淳一が大げさに驚いてみせる。
「今まで、彼女のかの字もなかったですからね。」
和哉はニヤニヤしながら、お弁当を食べ続ける。
「彼女……できたの?」
智もびっくりして、修を見る。
修はぶっきらぼうに
「そうだよ。」
と言い捨てる。
「え?え~~!!ほんと?ほんとなの?」
雅範が修の肩をゆすりながら、隣に腰を下ろす。
「だから、そうだって言ってるのに。」
うるさそうに雅範を睨む。
「なんで?どういう心境の変化?」
「俺だって、彼女の一人や二人……。」
「え?もう一人いるの!?」
雅範がさらに目をまん丸にする。
「違うわ!彼女は一人!」
「どんな子なの?」
淳一は少し顎をあげて、から揚げを口にしながら修を眺める。
「みんなも見たことあるよ。……みんなの前で告った子……。」
修は言いたくなさそうにお弁当を食べ続ける。
「ああ、あのおとなしそうな……。修ちゃんにしてはいい子選んだじゃん。」
「俺にしてはってどういう意味だよ。」
修の箸が止まり、雅範を睨みつける。
「何?修ちゃん、機嫌悪い~。」
雅範が口を尖らせて、ねぇと智に同意を求める。
智は微かに笑ってウィンナーを口に入れる。
修はそれをチラッと見て、またお弁当を口に頬張る。
「からかわれたのが、おもしろくないんでしょう。」
和哉がニヤニヤしながら、そんな三人を見比べる。
お昼休みが終わり、それぞれが教室に戻ろうとした時、
智が修を呼び止める。
「修君、今日、一緒に帰らない?」
躊躇いがちに言う智に、修はすまなそうに、小さな声で答える。
「ごめん……今日は……。」
「あ、ごめん。彼女と帰るよね。ううん、気にしないで。」
智は笑って、修を残して足早に去っていく。
その後ろ姿を見て、修の胸は何かにギュッと捕まれる。
これでいいんだと、自分に言い聞かせ、修も自分の教室へと向かう。
淳一が隣にやってきて、修の肩を抱いた。
「本当にいいの?彼女なんて作って?」
「いいんだよ。」
「……智は…いいの?」
修は黙って淳一から顔を背けた。
「……俺、本気でいっちゃうよ。智。」
「なっ……そんなこと、できるわけないだろ?」
「どうして?」
淳一がニヤッと笑う。
その遠のく二人の後姿を、智はぼんやり見つめていた。
「行きましょう。」
和哉が智の背中を叩く。
「うん……。」
「なに?気になるの?修ちゃんの彼女。」
「そんなことないけど……。」
智は語尾を濁して下を向く。
和哉は笑って智の背中をまた叩く。
「智も彼女が欲しい?」
「……わかんない。」
「あなたは……自分の気持ちに正直でいてくださいね。」
和哉はニッコリ笑って、智の頭を撫でた。
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