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season #10
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「これ、おかしいでしょう?」
みんなが、ずいっと顔を写真に寄せていく。
「良く撮れてるよ?」
雅範がじっと写真に見入る。
「だから、そうじゃなくて。」
和哉がイラッとして答える。
「おかしいでしょう?」
「和哉、これ、タイマー?」
修が、ん?という顔でそう言うと、和哉はそうそう、と顔をほころばせる。
「残念ながら、タイマーまでは用意してないんですよ。」
「ということは、これ、誰が撮ったんだ?」
修が顔をしかめる。
「そう、そこです。私以外にもいるんですよ。写真撮ってるやつが。」
「ま、いてもおかしくないよね。俺ら、隠れてるわけじゃないし。」
淳一が最後のお弁当を口にして、弁当箱に蓋をする。
「私、中学の時から気になっていたんですよね。」
和哉はみんなの顔を見回す。
「中学?そんな時からあったの?」
雅範がやっと時計を気にし、弁当箱を広げ始める。
「ま、雅範は見ても気づかないでしょうけどね。」
雅範がムッとして和哉を見ると、和哉がニヤッと笑う。
「でね、その写真を見てみると、これがね、
5人をランダムに撮っているようで、智一人の写真だけないんですよ。」
4人は一斉に、えっという表情で和哉を見つめる。
「全部見たわけじゃないんでしょう?」
淳一の目が険しくなる。
「全部見ましたよ。カタログが出回ってたから。」
「カタログ!?」
雅範が声をあげると、遠巻きに見ていた子達が一斉に雅範に視線を注ぐ。
雅範は慌てて両手で口を隠し、キョロキョロする。
「A4の紙に20~30位の写真が印刷されてて、それに名前を書いて、
お金と一緒に注文する。すると、後日家に写真が届くシステムらしく、
みんな適当に回して、いつの間にか回収されてたみたいで、
誰がやってたのか、わかんなかったんですよ。」
和哉が残念そうに唇の端を引き上げる。
「そんなの見たことないよ。」
雅範が小声で4人にだけ聞こえるように話す。
「女子の間では知られてたみたいですけど……。年に1、2回あったらしいですよ。」
「そんなやり方じゃ……お金が無くなるとか、トラブルは?」
修が、自分と智の写った写真を見ながら聞く。
「あったかもしれませんけど……。ま、いわゆる裏取引ですから。」
和哉はニヤッと笑って、最後の卵焼きを口に放り込む。
「公明正大じゃないからね。」
雅範が、うんうんとうなずく。
「高校でもやってるってことは……同じ高校に進学したってことだよね?」
淳一が眉間に皺をよせる。
「まぁ、そうですよね。でも、今のとこ、実害がないから……。」
「そうだね。」
淳一も自分の写真を見つめる。
「智の写真が無いっていうのは?」
修が目を光らせる。
「私もそこが気になって……。たまたま、写真が撮れなかったのか、
はたまた売りたくなかったのか……。」
「え?ストーカー?」
雅範は自分の言葉にびっくりして、自分で目を丸くする。
「可能性がないわけじゃない……。」
和哉がみんなをゆっくり見回し、最後に智を見る。
気づくとみんなが智を見ていて、智がドギマギして恥ずかしそうに笑う。
「智、今日から毎日、俺と一緒に帰るから。」
修が智の腕を掴んでそう言うと、智はニッコリ笑って
「だ、大丈夫だよ。何かあったわけでもないんだから。」
「何かあってからじゃ遅いでしょう?」
修の強い口ぶりに智は黙ってしまう。
「みんなで交替で帰ろう。智は一人にはならない。いいね?」
淳一がみんなの顔を見回し、同意を求める。
「そんな……大丈夫なのに……。」
「大丈夫と確信が持てるまで……ね?」
和哉が優しく智を見つめる。
「うん……。」
智がすまなそうにうつむく。
「……今日は、俺と帰るよ。」
修が有無を言わせぬ口調で智に言う。
「でも、……修君は彼女……。」
「いいから。」
修がそっぽを向いて答える。
智は下を向いて、微かに笑った。
修はそんな智をチラッと見て、二人が写った写真をポケットにしまった。
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