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season #19
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修が行ってしまうと、智がポツリとつぶやく。
「おいらに触られるの……嫌だったのかな……。」
三人は顔を見合わせて、首を横に振る。
「そんなことないでしょう。むしろ喜んでるから、ああいう態度……。」
和哉は言いかけて、やめる。
「え?」
智が目を見開いて和哉を見る。
「なんでもありません。私が修ちゃんの手助けする必要ないですもんね。」
和哉はニヤリと笑って、目の前の弁当を口にする。
「そうそう。悩んで苦しんだ方が修ちゃんの為なんじゃない?」
淳一もニヤニヤしながらウィンナーを口に運ぶ。
「みんな意地悪~。」
雅範も笑いながら、大好きなから揚げをパクリと口に入れる。
智はみんなを順に見ながら、首を傾げて卵焼きを頬張った。
「西沢君……。新しいのある?」
教室で帰り支度をしている和哉のところに、普通科クラスの女子が二人やってきた。
すぐさま和哉は、奥の階段の3階の踊り場に二人を連れて行く。
ここは人通りが少なくて、秘密の話にはうってつけだった。
「ありますよ。最近のは……智とジュン君のかな?」
和哉は鞄からB5サイズの冊子を取り出す。
「キャー!私、小野寺君の!…あ……でも、松田君のも見せて。」
一人が、表紙に智と書かれた冊子を広げると、写真に見入る。
「ねぇねぇ、絡んでる写真はないの?」
「絡んでる?」
「そう……仲良さそうなヤツとか。」
「そんなのが欲しいの?」
「欲しいよね~。」
「うん。」
女子は二人でニコニコしながら、期待に満ちた目で和哉を見る。
「なんでそんなのが欲しいの?好きな子一人の写真のがよくない?」
二人は顔を見合わせてクスクス笑った。
「それは持ってるもん。5人が仲良さそうにじゃれてる写真とか、萌えるよね~。」
「うんうん。」
「萌えるんだ。」
和哉が二人の顔を交互に見る。
「うん。」
二人は同時にうなずく。
「どんなのがいいの?」
「え~っとね……。」
キャッキャ言いながら話す女子の話を、和哉は熱心に聞き入った。
その日は淳一が智と帰ることになった。
智は部活が終わると、淳一の帰りを校門で待った。
野球部の甲子園の夢は早々にたたれ、すでに来年に向けての練習が始まっている。
この学校の野球部は甲子園に行ったことなど一度もない。
なのに、なぜ淳一が甲子園を目指して野球部に入ったのか。
4人は不思議で仕方なかった。
でも、だから、高校に入ってから野球を始めた淳一でも、
持ち前の運動神経でレギュラー入りできた。
淳一が重たそうなスポーツバックを揺らしながら、駆け寄ってくる。
智はニッコリ微笑んだ。
智は知ってる。
惜しむことなく努力する淳一を。
目的に向って真っ直ぐ進んでいく淳一を。
そんな淳一が頼もしくて、友達でいることが誇らしかった。
それに加えて光りを放つカリスマ性。
他の4人のそれとは違い、キラキラと光り輝くようなオーラを
いつでも淳一は放っていた。
智はそんな淳一が眩しくて目を細める。
夕闇の中、淳一は息をきりながら智の隣にやってきた。
「お待たせ。結構待ったでしょ?ごめんね。」
淳一が隣に並ぶと二人はゆっくり歩き出した。
「そんなことないよ。おいらも部活、長かったから。」
智はニッコリ笑って淳一を見る。
淳一はそんな智を優しく見つめる。
淳一の目が優しすぎて、智は視線を逸らす。
遠くに見える一番星が輝きを増し、群青色の空がどんどん広がっていく。
「その後、何もない?」
淳一が聞く。
「何もって?」
智は修のことを思い出す。
「変わったこと。」
「何もないよ。」
お昼に先に帰った修とはまだ会っていない。
自分が触れたのが嫌だったのか、本当に用事があったのか、
智にはわからなかった。
智がボーっとした顔で空を眺めたので、淳一は智の顔を覗き込む。
「本当に変な人とかいない?」
「変な人?」
「そう、後をつけられたりとか……。」
「ああ、みんながいてくれるから大丈夫だよ。
そんなに心配しなくても、今までだって大丈夫だったのに。みんな心配症なんだよ。」
智はちょっと口を尖らせる。
「抱きしめられたりとか……。」
「え?」
「キスされそうになったりとか……。」
淳一の言葉にあの日のことを思い出す。
「そ、そんなこと……。」
その顔を見て、淳一は立ち止まり、智の肩に手を掛ける。
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