アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
season #36
-
男子生徒と別れた智は、校門で和哉を待っていた。
暗くなり始めた空は、西の方をオレンジ色に染めている。
しばらくすると、和哉がやってきた。
「ごめん。ちょっと時間かかっちゃって。」
和哉は笑いながら顔の前でごめんのポーズを取る。
「ううん。全然大丈夫だよ。」
智はニッコリ笑って歩き始める。
和哉も並んで歩き出すと、智の腕に触れるくらいくっつく。
「その後、どうですか?」
「どうって?」
智が首を傾げて和哉を見る。
「見られてるとか……ない?」
「ん~、ないと思う。」
「ふふふ。あなたじゃ気づかないか……。」
「……うん。」
智がすまなそうに笑う。
「じゃ、修ちゃんの方は?」
和哉が智の顔を覗き込む。
智は遠くの空を見つめ、ポツリとつぶやく。
「な~んにも。」
「何も?」
智は和哉の顔をチラッと見る。
「うん。」
「何もないの?」
「……うん。」
智が口を尖らせて下を向くのを見て、和哉が微笑む。
「……いいじゃないですか。ゆっくり行きましょう。」
和哉は智の腕を取り、ギュッと体を近づける。
「うん……。でも、マー君は押せ押せって。」
和哉はチッと軽く舌打ちし、片頬をあげる。
「で、押してるんだ?」
「うん……。」
「でも何もないの?」
「うん……。」
下を向いたままの智を見て、和哉は溜め息をついて口を結ぶ。
「私としては、押して押して、早く振られて欲しいですけどね?」
和哉が、ふふっと笑って智の脇を小突く。
「押しても修ちゃん、全然反応してくれない……。」
いや、十分反応してるでしょ?と和哉は思ったが、
智の鈍感さが可愛くて、憎まれ口を叩きたくなる。
「さっさと振られちゃいな。」
「振られても諦められないかもしれないよ?」
智がちょっと真剣な顔になる。
「そしたら……私が忘れさせてあげます。」
和哉がニコリと笑う。
「それでも忘れられなかったら?」
智は立ち止まって和哉を見つめる。
和哉は智の困ったような、でも真っ直ぐな視線に
しょうがないと肩を落とす。
「そしたら……また応援してあげますから。」
和哉が笑って智を見ると、その笑顔がゆっくり智を包んでいく。
「うん……うん。ありがと……。」
二人はまた並んで歩き出す。
辺りはすっかり暗くなり、昼間とは違った心地よい風が掠めていく。
和哉はそっと智の肩に手を回し、ポンポンと二度叩いた。
次の日の休み時間。
智は自分を呼ぶ声に振り返る。
教室の入り口で、男子生徒がにこやかに笑って手を振っている。
「どうしたの~?」
智もにっこり笑って、男子生徒に駆け寄っていく。
「いつでも話しに来てって言われたから、来てみました。」
男子生徒は小首を傾げて、首筋に手を当てる。
「やっぱりまずかったですか?」
伏し目がちに智を見る男子生徒に、智はふにゃりと笑って答える。
「全然。来てくれて嬉しいよ。」
智の言葉にホッとした男子生徒は、意を決したように小さくうなずく。
「あの……、今日は俺と一緒に帰ってもらえますか?」
「今日?」
「はい。いつもどなたかと待ち合わせしてるから……。
約束しないとダメかなと思って……。」
男子生徒はまた伏し目がちに智を見る。
「ん……いいよ。みんなにもそう言っておくから。」
「あ……できれば内緒で……。」
「内緒?」
「はい……みなさんに悪いから……。」
「そんなことないよ。みんな心配性なだけだから、大丈夫だよ?」
「でも……。」
男子生徒はすまなそうに眉を下げる。
「わかった。みんなには言わないね。」
智がにっこり笑うと、男子生徒の顔が明るくなる。
「お願いします。……じゃ、帰りに校門で。」
「うん。」
男子生徒は嬉しそうに手を振ると、智に背を向けて帰って行った。
その背中を見ながら、智はポツリとつぶやく。
「みんなに内緒……できるかな?」
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
36 / 83