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season #37
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その日のランチ。
木の下のテーブルに、今日も修は現れなかった。
「修ちゃん、今日も部活?」
雅範が弁当を口いっぱいに頬張りながら、淳一に聞く。
淳一はチラッと智を見ると、コロッケを口に運ぶ。
「ん、そうみたいだね……。」
智は考え事をしているようで、箸を咥え、じっと弁当を見つめている。
「ふうん。サッカー部、忙しいねぇ。」
雅範はさらに大きなご飯の塊を頬張って、
「今日、智と帰るの修ちゃんじゃなかったっけ?」
片頬をいっぱいにして、和哉に聞く。
智はハッと我に返ったように和哉を見る。
「ジュン君でしたよね?」
和哉が淳一に視線を投げると、淳一がすまなそうに智を見る。
「ごめん。今日、ミーティングがあって遅くなる。待っててくれる?」
「え……あの…。」
智が口を開くのを遮って、和哉が割り込む。
「校門でずっと待たせるの?危ないでしょ?」
「そんなことな……。」
今度は雅範が智を遮る。
「俺のが早いから、俺が帰ろっか?」
「いえいえ、私が帰りますから!」
「いいよ、いいよ。俺に任せて。」
「だから、私が帰るって!」
和哉と雅範がしばし言い争うと、智が二人の間に割って入った。
「おいら、一人で大丈夫だから!」
智にしては大きな声に、二人はびっくりして智を見る。
「それはダメでしょ?まだ安全確認されてないんだから。」
和哉が咎めるように言うと、智はちょっとムッとして答える。
「大丈夫だよ。だいたい、心配しすぎなんだよ。みんな。」
智は大きな口を開けて、自分の口に最後のから揚げを押し込んだ。
「そうかもしれないけど……。」
雅範が心配そうに智を見る。
「おいら、一人で大丈夫だから。ね?今日は一人で帰るから!」
「それはちょっとヤバイでしょ?」
淳一が鋭い目つきで智を見つめる。
ドキッとした智は淳一から目を逸らすと、ペットボトルのお茶を喉に流し込んだ。
「いいから!今日は一人で帰るって決めたから!」
そう言い放つと、智は弁当を手早くまとめる。
そんな智を和哉がじっと見つめる。
ダメだ。カズの目を見ちゃダメだ。ばれちゃう……。
なんとか弁当をまとめ、チラッと3人を見ると、3人も智を見ていてドキドキする。
大丈夫。ちゃんと内緒にできた……。
でも……みんなといたら、きっとばれちゃう……。
早く行かなきゃ。
智は3人から顔を背けると、足早に校舎に向った。
その後ろ姿を見て、淳一と和哉が目配せする。
「あれ、何かおかしくない?」
淳一が箸で智を指差す。
「……明らかに、おかしいですよね?」
和哉も唇の端を吊り上げて、鋭い目つきで淳一を見る。
「あれ?そうだった?智もたまには一人になりたいんじゃないの?」
雅範はお気に入りのウィンナーを頬張ると、にっこり笑う。
そんな雅範を見て、二人は溜め息をついた。
「大丈夫。今日は私が様子を見ますよ。」
「うん。俺も早く終わらせるから。」
二人は淡々と弁当を口に運んだ。
「そんなに心配しなくても……。」
雅範が言うと、二人が一斉に雅範を見た。
その視線に押されて、雅範がボソッとつぶやいた。
「はぁ……智……お前に自由はないみたいだぞ……。」
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