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season #42
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そんな智の様子は想定内のようで、すぐに和哉は淳一を見る。
「顔、見た?」
「見た。」
「わかった?」
「うん。同じクラス。たぶん中学も。」
「じゃ、小学校も?」
雅範が割って入る。
「そうかも……。でも、全然覚えてないんだよな……。クラスでも目立たないし……。」
淳一が首を捻って考える。
「俺さぁ、どっかで見たことあると思ってたんだけど、小学校とか中学とかなのかな?
なんかちょっと違うような……。」
雅範も仕切りに首を傾げ、思い出そうとする。
「名前は?」
和哉が言うと、淳一は顎を撫でながら答える。
「貴田……春…彦……じゃなかったかな?ごめん。下の名前はちょっと自信ない。」
「ふうん。じゃ、ちょっと調べてみますよ。」
和哉がニコッと笑って首を横に振る。
「ちょっと待って。何調べるの?全然悪い子じゃないよ?」
智が一人一人の顔を見ながら、懇願するように言う。
和哉は困ったように笑うと、智の肩に両手を置く。
「悪い子じゃないかどうか、確認しないと。」
「どうして?」
「あなたは忘れちゃったの?写真撮られてるんだよ。しかも、あなたの写真だけない。
それがどういう意味なのかわかるまでは……ちゃんと調べないと。」
「写真くらい別に……。」
智はふて腐れて金網を蹴る。
「本当にいいの?」
淳一が智の顔を覗き込む。
「赤い電球が光る中で、部屋中に写真が貼ってあって、それにナイフが刺さってても?」
「そ、そんなこと……。」
「ないかどうか、わかんないでしょ?」
淳一は、智の額に額がくっつきそうなほど近づいて、智を見る。
その目力に、智は背中を金網にくっつけて、泣きそうな顔で淳一から顔を逸らす。
「でも……悪い子じゃないよ。」
「だから、私が調べてくるから。ね?」
和哉が諭すように言うと、智もしぶしぶうなずいた。
「大丈夫だよ。智の友達なんでしょ?」
雅範が智の肩を抱いて、頭をコツンとくっつける。
「また一緒に帰れるよ。」
「うん……。」
智の言葉にかぶるように、遠くから声が聞こえる。
「ま~さ~の~り~っ!」
みんなが驚いて振り向くと、すっかり帰ったと思っていた修が、
大荷物を乗せた自転車で突進してきた。
「修、修ちゃん?」
雅範が目を白黒させていると、みんなの前でキキーッと急ブレーキをかける。
「…油断も隙もない……。」
「修ちゃん、学校に帰ったんじゃないの?」
淳一もびっくりして、大きな目をさらに大きくする。
「帰るよ。これから。」
ぶっきらぼうにそう言って自転車を止めると、びっくりして動けなくなっていた
雅範の腕を智から引き離す。
「ほんと、危なくて目が離せない。」
「修ちゃん、電源しっかり入ってんね……。」
雅範が感心したように両腕を組んで、小さくつぶやく。
「は?電源?」
修が首を傾げると、智が不思議そうに修を見る。
「修君は、どうしておいらが誰かに触られると現れるの?」
「え?そ、それは……お、俺、行かなきゃ。」
修は慌てて自転車の向きを変える。
「じゃ。……お前ら……触んなよ!」
一人一人を指差して、凄みをきかせて帰って行く。
淳一はフンッと鼻を鳴らして、修の背中に向って叫んだ。
「修ちゃん、急がないとマネージャーが待ってるよ!」
淳一が口笛を吹いて修を見送ると、修は振り返って鬼の形相で睨むと、
ものすごい勢いで自転車を漕いで行った。
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