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season #45
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「貴田晴彦……やっぱり私達と同じ小学校、中学校でしたね。」
和哉はそこで卵焼きを頬張った。
「俺も、それ、俺も聞いたから!」
雅範が箸を振り回す。
箸についたご飯粒が飛んで、和哉が嫌そうな顔をする。
「小学校の頃も、やっぱり目立たなくて大人しい子だったみたいですね。」
「ふうん。今とあんま変わんない?」
淳一が箸に肉団子を差して言う。
「まぁ、そうですね。……3、4年になって写真を撮り始めたみたいで……。」
「写真!」
淳一が大きな目をさらに見開く。
「イベントだけじゃなく、結構普段から持ち歩いてたみたいですね。」
和哉はゆっくりご飯を口に運ぶ。
「じゃ、写真を売ってたの……。」
淳一は和哉を見つめる。
「十中八九、彼でしょうね。」
和哉はもぐもぐと口を動かし、飲み込んでいく。
「で、その頃から雰囲気が変わってきたと……。」
「雰囲気?」
修が箸を止める。
「そう。それまでは友達も少なくて、学校も休みがちだったのが、
周りと話すようになったみたいで……。」
「ああ、それ、言ってた!」
雅範がまた箸を振り回す。
「なんか、幼馴染の女の子としか話さなかったって。」
「幼馴染?」
淳一が首を傾げると、智は不安そうな顔で淳一を見つめた。
「そうそう、あ~、ジュン君覚えてない?ほら、智が初めて女の子達にからまれた時。」
雅範が続ける。
「え?いつ頃?」
「3年生…だったかな?教室で、女の子に囲まれて……。」
「ああ~、覚えてる。」
淳一は目を細めて、記憶を探る。
「その時、ジュン君のことが好きな気の強い子いたの覚えてない?」
修が、あっと小さくうなずいて、人差し指を軽く振る。
「覚えてる!背が高くて、ズバズバ言う子!」
「そうそう!その子が貴田君の幼馴染。」
「ふ~ん。なるほど。」
和哉が口に手を当てて考え込む。
「何?どうしたの?」
雅範が和哉に言う。
「いやね、いろいろ繋がってきたな、と。……ね?智?」
和哉が智に視線を送ると、智はハッとして下を向く。
「いろいろ聞いたんでしょ?彼から。」
みんなが一斉に智を見ると、智は下を向いて、弁当をまとめ始める。
「おいら、もう行くね。」
立ち上がろうとした智の腕を、修が掴む。
「待って。ちゃんと話して……。」
「ダメだよ。約束だもん。」
智は泣きそうな顔で修を見る。
「いいですよ。智は何も言わなくて。
今から私が話すこと、黙って聞いててくれれば……ね?
それなら約束破ったことにはならないでしょ?」
和哉が優しく微笑んで、座るように促す。
智はしぶしぶ椅子に座ると、みんなの顔を見回した。
「うん……。」
眉を八の字にしたまま、ゆっくり弁当を広げ始めた。
和哉はそれを見ると小さく溜め息をついて、おもむろに話し出した。
「小学3年生の貴田君の唯一の友達。その友達はジュン君が大好き。
貴田君はその幼馴染のために、写真を撮り始める。私達の。」
みんながうん、とうなずく。
「前後がどっちかわかんないけど、ジュン君は智が大好きだとわかる。」
「ジュンが智が大好きだと知ってからか、知る前かってこと?」
修が首を傾けて、和哉を見る。
「そう、どっちでもいいでしょ?そこは。」
「……それで?」
雅範が先をせきたてる。
「メインで撮ってたのは……ジュン君と智の写真。
ジュン君の写真は彼女が欲しがったから。智の写真は……。」
「お手本にした!」
修が声をあげる。
「そう。少しでもジュン君から好かれるために、智の真似を始めた。」
和哉は最後の言葉を、噛み締めるように言った。
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