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season #49
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次の日、智が美術室で石膏デッサンをしていると、
出入り口のドアから、和哉がひょっこり顔を出す。
「智、今日俺も部活だから、一緒に帰ろう?」
みんながいるのもお構いなく、和哉はそう言ってニコッと笑った。
智はその場で、うんとうなずく。
和哉はそれを確認すると、どこかに消えていった。
午後になると、今度は修が現れた。
「智……ちょっといい?」
智は部活の部長に向かって、ちょっと頭を下げると、修のいる出入り口に向かう。
「修君……。」
智は修と一緒に廊下に出る。
そのまま屋上につながる階段の踊り場に出ると、振り返った。
「どうしたの?まだ合宿中じゃなかったっけ?」
智の言葉をいつもより冷たく感じ、修は眉毛を下げて、情けない顔になる。
「いや、ちょっと時間もらってきた。」
修は何をどう話したらいいのかわからない。
ただ、誤解を解かなくてはと思い、練習を抜け出してきていた。
「昨日のは……その……。」
「昨日……。」
智の顔が引きつり、赤みを増していく。
「誤解だから!」
「誤解って……。」
「だから、先輩とはふざけてただけだから。」
「そんなのわかってるよ。」
「なんにもないから。」
「なんにもないって、何かあるかもしれないってこと?」
智の顔がさらに強張る。
「そうじゃなくて……。」
修はどう言ったらいいのかわからず、唇を噛む。
「智は何が嫌だったの……?」
「何って……。」
智にもよくわからない。
ただ嫌で嫌でしょうがなかった。
修の裸が嫌だったのか、先輩とふざけてるのが嫌だったのか。
昨日の光景を思い出しただけで、顔に血が上っていくのがわかる。
「修君、大丈夫だから。誤解なんかしてないから。
それだけなら、もう行くね。」
そう言うと、階段を下り始める。
智は、そのまま修と一緒にはいられなかった。
「待って。」
修が智の肩を掴んで、引き止める。
掴まれた肩から、熱が全身に広がっていく。
「いや……。」
智は修を振り払うと、走って美術室に戻っていった。
空に残った手を見つめ、修はポツリとつぶやく。
「また……嫌って……。」
泣きそうな顔だった。
その日の帰り、智は昇降口で和哉を待った。
校門で待つには暑すぎる午後5時。
昼間のような灼熱ではなくなっても、まだ陽射しは刺すように熱い。
「お待たせ。」
和哉が智の肩を叩く。
昼間、修に肩を掴まれたことを思い出す。
和哉の手からは全身に広がる熱は感じられない。
水浴びをする二人を見てから、自分が何かおかしいことに智も気づいていた。
「行きましょう?」
靴を履き替え、和哉が先にたって昇降口を出て行った。
「カズ……。」
「あ、修ちゃん、練習頑張ってるね。」
和哉が校庭を見渡して、ニコッと笑う。
智は和哉の隣にピタッと並ぶ。
「……うん。」
「どうしたんですか?」
「え?……何が?」
「何かあった?」
和哉が優しく笑う。
「どうしてわかるの?」
「……長い付き合いですから。」
和哉はさらに優しい笑顔で智を見る。
自分の肘を、智が摘むようにいじっている。
これは智が甘えたい時、よくしてくる行動。
「和哉には隠し事できないね。」
智もなぜか嬉しそうに笑った。
「そうですよ。だから、しゃべってしまいなさい。」
「うん……、昨日……。」
智はゆっくり話して聞かせた。
和哉はうん、うんと相槌を打ちながら、智の話を聞いてくれた。
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