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season #51
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「ピーッ!じゃ、10分休憩。」
キャプテンが手を上げる。
みんながバラバラと水場に向かって歩いていく中、修は一人、ボールを蹴り続ける。
「修!ちゃんと休め。」
キャプテンに言われても、修はボールをゴールに向かって蹴り続ける。
「休まないとバテるぞ!」
キャプテンが修に近づいて来る。
「練習したいんです!」
修は体を動かし続けたかった。
動いてないと、さっきの智を思い出して凹みそうで怖かった。
そんな修を見て、先輩がふうん、と腕を組む。
「何かあったのか?」
「いえ……何も……。」
修は言葉を濁して、思いっきりボールを蹴る。
蹴ったボールは勢いよく、ゴールに吸い込まれていく。
「でも、休まないと熱中症になるぞ。いいから少し休め。」
そう言ってキャプテンは修の肩を抱き、無理矢理、日陰へ連れて行く。
細いわりに筋肉質なその腕は、修を抱えて離してくれない。
「……わかりました。」
修は仕方なく、キャプテンと一緒に歩く。
「……女?」
「え?」
「女だろ?」
キャプテンが、ニヤニヤして修を見る。
「ち、違います。」
相手が女だったらこんなに苦労しないよ。
修はそう思って、唇をかみ締める。
「あはは。まぁ、そういうことにしといてやるよ。」
「本当に違うんです!」
キャプテンは鼻で笑って受け流す。
「先輩!」
必死な修を見て、キャプテンは笑って肩を叩く。
「そういう時は練習が一番だよな?思いっきり汗かいて、何も考えないのが一番いい!」
「……。」
修も体を動かして、忘れていたかった。
「幸い、今は合宿中。思う存分練習できる。」
「……はい。」
また、修を見て、キャプテンはニヤニヤ笑った。
「しかし、お前が女で悩むとはな……。散々女を泣かせるからだ。」
「そ、そんなことありません!」
「聞いてるぞ~、いろいろ?」
「先輩!」
修は困った顔で先輩を見上げる。
「先輩こそ……。」
先輩は二カッと笑って唇の端を上げる。
「俺はその都度、本気だから!」
先輩は修の頭をガシガシ撫でると、マネージャーのところへ走って行ってしまった。
修は、もう誰もいない水場へ行くと、頭から水をかぶって、ブルブルっと頭を振った。
夜、夕食も終わり、ミーティングを済ませると、コーチがポケットマネーで
アイスを買ってくれるということになった。
マネージャーが修に声をかける。
「ごめん。他のマネージャーは洗濯があるから、修君、アイス買いに行くの
つきあってくれない?」
「いいですけど……。」
周りにいた部員が、ヒューヒューと冷やかす。
「マネージャーもイケメンには弱いんだな。」
キャプテンもニヤニヤ笑っている。
「そんなこと言うなら、先輩が行ってあげればいいじゃないですか。」
修が口を尖らせながら言うと、キャプテンは爽やかな笑顔を浮かべながら、
マネージャーの肩を抱く。
「きゃっ。」
マネージャーが肩をすくめると、
「俺が行ったら、2時間は帰ってこられない!」
そう言って、ぎゅっと腕に力をこめる。
あははと部員達も笑い、はやし立てる。
「二人っきりで、何もしないのも失礼だろ?」
「もう、いいから!修君、行こ。」
マネージャーはキャプテンをひと睨みすると、修の腕を掴んで食堂を出て行った。
「おい、本気で怒ってない?」
「大丈夫、大丈夫。あいつは俺のことわかってるから。」
食堂から聞こえる声をマネージャーが聞いているのか、
修は気になってマネージャーの顔を伺う。
「いいんですか?俺で。」
マネージャーに聞くと、
「修君のがいい。あいつ、全然わかってないでしょ?」
マネージャーは苦笑いして、外履きに履き替える。
修も履き替え、マネージャーに続く。
「そうかな?意外と本気かも……。」
「本気!?私、そんなに物欲しそう?」
マネージャーが心外だと言うように目を見開く。
「そうじゃなくて……。」
通りに出ると、車通りはなく、月が明るく輝いている。
「でも……先輩とはないんでしょ……その……。」
修が言い淀むと、マネージャーはまた苦笑いして言う。
「H?あいつとは……気持ちがないとできないよ……。」
マネージャーが月を見上げると、釣られて修も月を見る。
「ごめんね。利用してるみたいで……。
でも、どうしようもなく人肌が恋しい時があるの。」
マネージャーは寂しそうに笑った。
「俺も……利用してるから……。」
修は昼間の智を思い出した。
なんであんなに怒ってたんだろう。
嫌って……何が嫌だったんだろう……。
俺、何しちゃったんだ……。
「今、あの子のこと考えてたでしょ?」
マネージャーがじっと修の顔を見ている。
「え?」
修は視線を外して、通りすぎた車のテールランプを見つめる。
「すっごく切なそうな顔してた。」
マネージャーはそう言うと、修の腰に手を回し、修の肩に頭を乗せた。
修もマネージャーの肩に腕を回し、頭をコツンとくっつける。
目的のコンビニが、もう、すぐそこに見えていた。
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