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season #61
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「結構狭くなってるよ~。」
先頭を行く淳一が後ろに声を掛ける。
二番手は雅範。その後ろに和哉。
智が和哉の後ろから声を掛ける。
「ジュン君、大丈夫?」
「大丈夫。大丈夫!」
淳一の声だけ聞こえてくる。
洞窟は通路のみになっていて、人一人がギリギリ通れる広さしかない。
5人は一列に連なって進んでいく。
ところどころ、天井から差し込む光で、真っ暗になることはなかったが、
足元はヌルヌルしていて、ゆっくりとしか進むことができない。
一番後ろの修は智の足元が気になる。
転んでケガをするんじゃないかと思うと、智の背中に添えた手を離せずにいた。
先頭の方で、バサバサッと大きな音がする。
それと同時に「ぎゃあ~っ!」と大きな悲鳴がして、三人が必死の形相で振り返る。
「どうしたの?」
「な、何かいた!」
淳一が大きな目をさらに大きくして、雅範の肩にへばりつく。
「いた!確かになんかいた!」
雅範も興奮して和哉にしがみつく。
「いたって何が?」
修は、和哉に押される智を抱きとめて踏ん張る。
「だから、何か!」
雅範が興奮した声で叫ぶ。
「バサッていったよね?鳥?」
和哉が前の様子を伺う。
「戻る?」
智が和哉の肩に両手をかけて言う。
「ジュンも雅範も怖がってんの?」
修はおもしろそうに目尻をあげて笑う。
「こ、怖がってなんか……。」
淳一の語尾が小さくなる。
「だったら修ちゃんが一番に行ってみ!」
雅範が修の腕をつかんで引っ張る。
「え?え~っ!」
修は智の脇を抜け、和哉の横を通り、雅範のところまで
引っ張られる。
雅範と淳一に押し出され、洞窟の先を見つめる。
暗い中で何かが動いてる?
「修ちゃん、怖くないんだろ?行ってみてよ。」
淳一と雅範はその場を動かず、修一人で行くように顎をしゃくる。
「え?俺一人で行くの?」
「何?やっぱり修ちゃんも怖いの~?」
雅範がニヤッと笑う。
「怖いわけないだろ?子供じゃないんだから!」
修は前を見据えてゴクッと唾を飲む。
「修君!」
一番後ろにいた智が淳一の前に現れる。
智が心配そうに修を見ると、修は意を決して前を向く。
「智……心配しなくても大丈夫だから。」
「おいらも行く。」
修の後ろに智もくっつく。
修は後ろ手で智の手を握り、前に一歩進む。
じわりじわりと前に進んでいくと、暗がりの中で何かが光る。
「……。」
修の足が止まる。
智の手前、男らしいとこを見せたいが、怖いものは怖い。
いいのか?これじゃカッコ悪いぞ?
そう自分に言い聞かせ、もう一歩進んでみる。
突然、バサバサッと音がして、何かが上空を飛ぶ。
「うわぁ~っ!」
修は顔を片手で隠し、智と繋いだ手にギュッと力をこめる。
「……こう……もり…?」
智が暗闇の向こうに目を凝らす。
「蝙蝠?」
修もじっと暗闇を見つめる。
時々、光るのは蝙蝠の目?
「修君、懐かしいね。蝙蝠。昔はいっぱいいたね。」
「いた……。あの工場跡だろ?」
修の顔の緊張も和らいでいく。
「あ~、覚えてる!みんなで蝙蝠の死体みつけて走って逃げたの!」
いつの間にか、雅範も智のすぐ後ろに来ている。
「そうそう!あそこ、夕方になると蝙蝠がいっせいに出て行って。」
淳一も思い出したのか、さっきまでの顔が嘘のように和らぐ。
「昼間はどこにいるのかわからないのにね。」
智がにっこり笑ってみんなを見回す。
「は、犯人がわかれば怖くないよ。」
雅範が言い訳するようにそう言うと、和哉がニヤリと笑う。
「さっきまでは泣きそうな顔だったのに。」
「う、うるさい!だったら和哉が先に行けよ!」
「私は先頭を行くタイプではないので。」
和哉が鼻で笑うと、淳一も一緒にゲラゲラ笑う。
「和哉はそういう屁理屈、天下一品だよな?」
「そうですか?」
みんな一頻り笑うと、暗闇も蝙蝠も全然怖くなくなっていた。
「じゃ、行こうか?」
修は智と繋いだ手をそのままに、前を見る。
「うん。」
智が答えると、みんな、それに連なった。
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