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season #63
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5人は帰りを急いだ。
暗くなると帰るのが大変だ。
曲がり角を曲がり、蝙蝠の巣を通り、プールのところまで来て、
先頭を行く淳一が立ち止まる。
「道がない……。」
後に続く智と修も呆然とする。
ただ大きなプールが行く手を塞いでいる。
和哉と雅範がその光景を見て、息を飲む。
さっきまであったはずの道がなくなっている。
「この壁際に道があったよね?」
暗い中を淳一が壁伝いに歩いてみる。
足首の辺りまで水に濡れるが、確かに道はあるらしい。
「満ち潮……。」
修がつぶやくと、和哉がハッとする。
「ボート!浜にあげただけだったよね?」
「う、うん。」
雅範も不安そうに答える。
「急がないと!」
修がみんなの顔を見回すと、みんな一斉にうなずいた。
淳一を先頭に見えない道を進んで行く。
急がないといけないのはわかっていても、さっきよりもさらに薄暗い上に、
足元も水に侵食されてわからない。
壁に手をつきながら進んで行く5人が、急ぐのは難しかった。
気持ちばかりが焦る。
なんとかプールを抜け、浜に出ると、浜はこの島に来たときの半分くらいになっていた。
「ボート!」
雅範が一目散に駆け出していく。
4人も駆け出し、ボートを探す。
狭い浜を行ったり来たりしながら探したが、ボートは見つからなかった。
「ないね……。」
浜の真ん中で淳一が溜め息をつく。
「ない……。」
修も手を腰に当て、海を見つめる。
浜を走り回っていた雅範が戻って来て、荒い息をついて叫ぶ。
「ないよ~!!」
ぼんやり海を見ていた智も、島を見回していた和哉もやってきて、
みんなで溜め息をつく。
「どうしよう~。」
雅範が不安そうに顔を歪める。
「どうしようったって……どうにもしようがない。」
和哉が首をすくめて、みんなを見回す。
みんな海パンのみで、携帯などはすべてビーチに置いてきた。
「雅範なら行けんじゃね?」
淳一が雅範を見る。
「そうだね、今、満ち潮みたいだし。」
修も雅範を見る。
雅範は遠くに見えるビーチを眺める。
「行けないことはないと思うけど……。」
雅範が一歩前に出ると、智が雅範の腕を取る。
「止めようよ。危ない。」
「大丈夫ですよ。雅範は頑丈だけが取り柄なんだから。」
和哉が智の肩を叩く。
「俺の取り柄はそれだけか!」
雅範が和哉をキッと睨む。
「それ以外に何がある?」
和哉は雅範をからかうように笑う。
「とりあえず、雅範が行くのは……やっぱり止めよう。危ないよ。」
修がそう言って、みんなを見回す。
みんな、うん、とうなずいて、さてどうしようと考える。
「まずは火を起こす?」
雅範が言う。
「ほら、よく無人島に漂着した人がするじゃん。」
雅範は和哉の肩を叩くと、茂みの中に入って行く。
「私はそういうとこ好きじゃないので……。」
和哉は淳一の背中を雅範に向かって押す。
「ええ~?俺?」
和哉が大きくうなずくと、仕方がないと、淳一が雅範に続いて入って行く。
「今日は最悪、ここで野宿かな……。」
修がつぶやく。
「夜は夏でも冷えますよ。それに虫が……。」
和哉は二の腕をさすってかゆそうにする。
「そうだね……何もないもんね。」
智が辺りを見回す。
「何か探すなら明るいうちだな。」
修も雅範達とは反対の、洞窟の方向に歩いて行く。
残念なことに、洞窟の方は洞窟の入り口だけ残してすべて海に飲まれている。
「ダメだ。何もない。」
すぐに戻ってきて智にそう告げる。
「大丈夫。みんな一緒だもん。」
智はこんな時でもにっこり笑う。
その笑顔を見て、修もなんだか安心してくる。
「そうですね。少なくとも明日になれば帰れるだろうし。」
和哉も智に向かってにっこり笑う。
「木の枝見つけてきた~!」
雅範の大きな声に三人が振り返る。
「雅範、それじゃたぶん無理だから……。」
駆けてくる雅範の後ろから、追いかけるように淳一もやってくる。
「ジュン君は無理だって言うんだけど、修ちゃん、どう思う?」
雅範は拾った木を修に見せる。
「これじゃ……火はつかないよ。もっと乾いてないと。」
「だから、俺も言ったろ?」
淳一が腕を組んで雅範を見る。
「だって~。」
雅範がションボリ肩を落とす。
辺りはだいぶ暗くなっている。
もう陽は沈み、刻一刻と夜に近づこうとしている。
5人は仕方なく、浜に並んで陸を眺めた。
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