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season #70
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目を開けた。
しばらくすると、うす暗がりの中、序々に焦点があってくる。
あれ?おいら、いつ寝ちゃったんだろう……。
ご飯を食べて……美味しいジュースを飲んで……。
あれ、本当に美味しかったな。
帰りにお土産で買って帰ろう。んふふ。
で、いつの間にか寝ちゃったのか……。
なんか、いい夢見た……。
妙にリアルな夢。
智が辺りを見回すと、左側にテーブルが見える。
右に窓。足元のずっと下には奥の部屋……。
ゆっくり上半身を起こしてみる。
奥の部屋には布団を並べて眠る4人。
布団もぴったりくっつけて、合宿みたいに寝ている。
ふふふ。マー君、カズの上に足のっけて~。
和哉、寝てるのに眉間に皺!
重いのかな?
智は布団から出ると、真ん中に寝ている和哉の布団までやってくる。
そっと雅範の足を退けると、和哉の眉間の皺が薄くなっていく。
やっぱり重かったんだ。
雅範を見ると、雅範は薄笑いを浮かべ、唇の端から涎を垂らしている。
智はティッシュを取って、雅範の口元を拭いてあげる。
マー君らしい。
思わず笑みが漏れる。
雅範の隣の淳一は、上を向いたまま身動きせずに寝ている。
端整な顔立ちは寝ていても端整で、石膏のアポロより綺麗。
淳一の奥を見ると、修が浴衣の裾もグジャグジャにして眠っている。
あれじゃ、お腹痛くなっちゃう。
智は修の隣に行き、修の下敷きになっている夏掛けを引っ張り出すと、
修のお腹に掛ける。
ぐっすり眠る修の顔は、難しい顔をしたかと思うと、ニヤニヤ笑う。
修君、寝てる時も忙しそう。
コロコロ変わる修の顔を見て、クスッと笑うと、さっきまで見ていた夢を思い出す。
修と恋人同士になった夢。
なぜか一緒に暮らしていて、起きると隣に修がいて、甘いキスを交わす夢。
そのキスが妙に生々しく、思い出しただけでも、顔が赤くなるのがわかる。
あんな夢を見るくらい、おいら相当修君のことが好きなんだ。
しかも、なんか、おいらスケベ……。
今、目の前にいる修は、無防備な寝顔を月の明かりの下に晒している。
智はそぉっとその唇に触れる。
筆を持つ細い指先で、そのぷっくりとした下唇をなでる。
不意に修が寝返りを打つ。
ハッとして手を引くと、横になった修の目が開く。
「修……君?」
「……おはよ。ほわぁ~。」
修が大きな欠伸をする。
「起こしちゃった?」
「……ん…ううん。大丈夫。」
修はまだ寝ぼけているのか、目がうつろだ。
「……今、何時?」
修が聞く。
智は床の間に置いてある時計を見る。
短い針は4の位置を指している。
「まだ4時だよ。もう少し寝たら?」
寝ぼけた修がやけに可愛い。
智は子供にするように、優しく肩を叩くとにっこり笑う。
「ん……智?」
「何?」
修はやっと隣にいるのが智だとわかったのか、びっくりして、頭を少し上げる。
「智?」
「んふふ。どうしたの?」
智がふにゃりと笑うと、修は辺りを見回し、頭を戻す。
「俺……寝てた?」
「うん。寝てた。」
「布団で寝たんだ……。」
「修君も寝ちゃったの?おいらも気づいたら寝てたみたい。」
二人はみんなを起こさないよう、小声で話す。
「みんな、布団敷いてくれたのかな?」
「俺が起きた時はもう敷いてあったから……。」
「起きたの?」
「う……うん。」
修は頭を掻いて、ちょっと顔を隠す。
起きたよ。智の顔見て……キスしたよ。
智も俺に抱きついたんだよ?
そう言えればいいのに。
修は月明かりに浮かぶ智の顔をじっと見る。
智はずっと笑ってる。
智も夢の続きを見てるようで、この柔らかい時間を、
ずっと感じていたいと思う。
きっと、夢の中でならできたであろう、修の、寝癖のついた前髪を
自分の指で払ってあげたいと……。
「……修君が起きた時、みんなはもう寝てた?」
「……いなかったから、露天風呂だったのかな?」
「お風呂……。今開いてるかな?」
「今?……たぶん。24時間じゃなかったけ?」
「……おいら、ちょっと行って来ようかな?今日帰っちゃうし。」
智は修を誘おうかどうか迷った。
一緒に行ったら、スケベなおいらがエスカレートしちゃう?
そう思うと、誘う言葉が出てこない。
でも、ここで誘わないのも変なので、勇気を出して言ってみる。
「修君も……行く?」
修は智の顔を見て考える。
一緒に行ったら俺、自分を保てるのか?
自問自答の答えはでない。
答えに詰まっていると、智が少し悲しそうに微笑んで立ち上がる。
「いいよ。おいら一人で行ってくるね。」
いや、待てよ。露天って他のお客さんもいるってことだろ?
一人で行かせるの、まずくないか?
「待って!俺も行く。」
智は振り返って、はにかんだように笑うと、うんとうなずいた。
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