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season #71
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「誰も……いない…?」
修は脱衣所の中を確認する。
ロッカーの鍵は全て付いている。
問題はこれから来る、朝風呂に入る客……。
時計を見ると、4時半近くになっている。
早起きのおじさん、おじいさんは5時過ぎくらいにはやってくる?
隣で、ニコニコしながら浴衣を脱ぐ智を横目で見る。
智を汚い欲望の目から守らなければ……。
修は自分の腰紐を解く。
智もチラッと修を見る。
修の筋肉質な体を、浴衣が滑り落ちていく。
修君の筋肉、キレイだな……。
肌もツヤツヤしてて、気持ち良さそう。
なぜか、先輩とじゃれあってた修の肌を思い出す。
ダメだ。あれを思い出すと、ドキドキしちゃう。
頭を振って、自分の考えを打ち消そうとする。
考えないように、考えないようにと思いながら、智も浴衣をストンと落とす。
その音で修が振り向く。
智の白い肌が昨日の海での日焼けのせいか、少し明るくなっている。
運動もしていないのに、均整のとれた体。
ほわっとしてるのに、昔から運動神経よかったもんな……。
すぐに誰かに譲っちゃってたけど、リレーだって球技大会だって、
いっつも選ばれてた。
智に見惚れ、修の動きが止まる。
下着に手をかけた智は、その視線に気づき、顔を上げる。
「修…君?」
慌てて修が視線を外す。
「あ…、な、何?」
見惚れていたのをごまかそうと、修も勢いよく下着を下ろす。
智は、目の前で修が下着を脱いだことにドキリとする。
こんなの見慣れてるはずなのに……。
付いてるものは同じだし、みんなで一緒にトイレに行ったりもする……。
そう言えば、昔、カズが言ってたっけ。
修ちゃんは大きいって。
本当に大きいのかな?
さっきチラッと見えたのを思い出す。
でもチラッとすぎて、よくわからない。
じっと見たことはない。見るものでもない?
修は下着をロッカーに突っ込むとタオルを持って風呂に向かう。
「あ、修君、おいらも行くから。」
智は急いで下着を下ろす。
「早く来いよ。」
修は振り向かずに外へ続くドアを開けた。
外の空気は少しヒヤッとする。
裸で外にいる恥ずかしさから、修は小走りで風呂に飛び込む。
湯気の揺らめく様子に、すごく熱いのかと思ったら、
思いの外ちょうどいい湯加減で、体が伸びる。
ドアの開閉の音がして、智も小走りでやってくる。
白いタオルを手に持ち、足の親指で温度を確認する。
「大丈夫だよ。あんまり熱くないから。」
修は両手を広げて、お湯を混ぜるように動かす。
「本当?」
「智は熱がりだからな~。」
笑いながらも智は見ず、空に顔を向ける。
智は足首までお湯に浸け、安心したように体を沈めていく。
「本当だ。これくらいなら、おいらでも大丈夫。」
タオルを石の上において、気持ち良さそうに両手を広げる。
「だから、言ったじゃん。」
修はやっと視線を智に向ける。
「うん。修君が嘘つくわけないもんね。」
ふふっと智が笑う。
修の胸がチクッと痛む。
俺は大きな嘘を智についてる。
でも、この嘘は一生つき続けるから、智にとっては嘘にならないはず。
バレない嘘は嘘じゃない。
「気持ちいいね~。」
智は空を見ながら修の隣に並ぶ。
日の出にはまだ早い。
まだ、星の瞬いてる空を二人並んで見上げる。
「旅行、楽しかった?」
「うん。みんなで来れてよかった~。」
智がふにゃりと微笑む。
「そうだね、また来年も来れるといいね。」
修もにっこり笑う。
「うん。毎年恒例にしようよ。すっごく楽しかったもん。」
「でも、来年は2年だから部活が大変で全員は無理かも……。」
「……そうだよね……。修君も……。」
「俺は……智の為なら部活くらい休むよ?」
修は端にある段差の上に腰を下ろす。
鳩尾(みぞおち)から上が、外気に晒される。
「修君……そういうこと、彼女に言うんだ。彼女は…大喜びだね。」
智は、うつむき加減で笑いながら、修の前で腰を下ろす。
「そんなこと言うわけないだろ?俺、まだ女、好きになったことないもん。」
「……ないの?」
「ないよ。」
修がぶっきらぼうにそう言うと、智は嬉しくて頬が緩む。
そうかぁ。修君、まだ好きになったことないんだ。
修が女の子と付き合っても、好きになったからではないんだと思うと、
智の心が弾んでくる。
「何?おかしい?」
「そ、そんなことないよ。」
智は浮き立つ心を隠そうと、蹴伸び(けのび)をするように体を伸ばす。
水面に智の裸が白い影を作り、向こう端まで伸びていく。
修はその影を見つめる。
俺は女なんか好きにならないよ。
智の為以外に、部活を休むこともない。
一生、智は特別で、智だけが特別で……。
向こうの岩に手をついた智がお湯から顔を上げると、
顔を擦って、髪を搔きあげる。
電灯の下、湯気の中で輝く智に、修は目を細めた。
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