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season #75
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雅範が部屋に戻ると、修と和哉がカメラを見て
何か、言い合っているところだった。
雅範は入り口に体を隠して、こっそり様子を伺う。
「こんなの、いつ撮ったんだよ。」
修は和哉のカメラの画像を見ながら言う。
「そりゃ、あなた、丸一日一緒にいるんですから。」
したり顔で和哉が笑う。
「あ!あ~っ!これダメでしょ?ダメなやつでしょ?」
「そうかなぁ?お客さんは大喜びだと思うけど。」
「そりゃ喜ぶでしょ。あ……これもダメ。絶対売るなよ。」
「それは智しだいでしょ?ね、智は気にしないよね?」
呼ばれて智も覗き込む。
「う……うん。ちょっと恥ずかしいけど……。」
智は照れくさそうに笑う。
「ダメ!智がいいって言っても絶対ダメ!」
修が和哉のカメラを奪い取る。
「何言ってるんですか。それ、30枚は売れますよ。お宝写真。」
和哉がクスクス笑うと、修はその写真を見つめながら、
「これが……30枚も世に出回る……ありえないでしょ!」
修は、闇雲にカメラのボタンを押し出す。
「あ、ああ~!止めてくださいよ。それ、壊したら弁償してもらいますよ!」
和哉は修の手からカメラを奪い返す。
「わかりました。どうしても智の写真を売って欲しくないなら、
レンズに向かってチュ~してください。」
「は?」
「修ちゃんのチュー写真。これなら30枚は売れるでしょ。」
「はぁ~?」
「どうしたの?智の写真、売っちゃってもいいの?」
和哉がカメラを構えて、修を待ち構える。
「し、仕方ない。」
修がカメラに向かって顔を作る。
「だぁ~。それじゃ、全然売れないから。こう、こうやって。」
和哉が修の指導に入ると、それを見て笑っている智を、雅範が小さな声で呼ぶ。
「智。」
智は、ん?と辺りを見回す。
「智。こっち。」
ようやく気づいた智が、にっこり笑って雅範の方へ歩いてくる。
「どこ行ってたの?マー君いなくなるから、心配してたんだよ。」
「いいから、こっち。」
雅範は二人に気づかれないように、智を廊下に連れ出す。
「ちょっと来てくれる?」
「ん?どこへ?」
「いいから。」
雅範は智の手を取ると、元来た廊下を中庭へと歩いて行く。
「マー君?」
雅範はずんずん歩いて行く。
ほどなくして中庭に着くと、さっきのおじさんがにっこり笑って待っていた。
「連れてきてくれたね。ありがとう。」
「え?おじさん?」
智が不思議そうに首を傾げる。
「これで大丈夫なんだよね?」
雅範は智の肩を抱いておじさんの前に連れて行く。
「ああ、大丈夫だ。本当にありがとう。」
おじさんはそう言うと、智の両手を取って、ぎゅっと握る。
「俺の目を見て。」
言われるままに智はおじさんの目を見つめる。
「やっと……来てくれたんだね。」
一瞬、智の世界がグヮンと歪む。
よろける智を雅範が抱きかかえると、智が空を見上げて目を閉じる。
「お、おじさん、智は大丈夫なんだよね!」
おじさんは智の手を離さず、何かに集中している。
「……怒ってるんだね……。」
おじさんが智に向かって悲しそうにつぶやく。
「え?誰が怒ってるの?ねぇ!」
雅範は抱えた智を心配そうに覗き込む。
「雅範!何してるの。」
振り向くと、淳一が不振そうに眉間に皺を寄せて立っている。
「ト……モ?」
淳一が小走りで駆け寄ってくる。
雅範の顔を睨み付け、おじさんと繋いだ智の手を引き離そうとする。
「何してんだよ!」
淳一の怒声が響く。
おじさんは智の手を離さず、反対に淳一に向かって怒鳴る。
「触るな!今、手を離したら、大変なことになる。」
淳一は何がなんだかわからないと、目で雅範に説明を求める。
「俺にもわかんないんだよ~。」
雅範は目をつぶり、唇を歪ませて、抱えた智をぎゅっと抱きしめる。
「大丈夫。その子は大丈夫なんだけど……。」
おじさんが困った顔で二人を見る。
「ごめん。ちょっとだけ、君の体を借りるね。」
「ええ?それどういう……。」
淳一の頭が大きく揺れる。
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