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season #76
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「ジュ、ジュン君!?」
淳一はガクンとその場に倒れ動かない。
雅範は智を抱えたまま、淳一の側にしゃがみこむ。
「ジュン君!大丈夫?ジュン君!」
淳一の目がパチッと開く。
「ジュン君……大丈夫?」
淳一は起き上がり、キョロキョロと辺りを見回すと、
肩を揺らして首を回す。
「なんか……久しぶりで肩が重い……。」
淳一は大きく伸びをして、アキレス腱を伸ばし始める。
「ジュン君?」
「はぁ~っ。よし。大丈夫そうだ。」
淳一は智の頬に手を添え、語りかける。
「出てきて。ちゃんと話をしよう。」
智の目もパチリと開く。
ボーっと空を見ていたその目が、雅範を見、淳一を見る。
ゆっくりと雅範の腕から起き上がると、胸元の襟を直し、裾も直す。
「ずいぶん……ずいぶんな言い様じゃありませんか。」
智の目がまっすぐに淳一を見る。
「え?智…?」
智の顔は凛としていて、いつものほわんとした優しい雰囲気は微塵もない。
雅範は智の顔つきが、いつもと違うのに困惑する。
「あたしがどんだけ待ってたと思ってるの。」
「お前……。出てきてくれたんだね……。」
淳一が智に駆け寄って、抱きしめようとすると、
その手はピシャリと払いのけられる。
「気安く触らないでおくれ!」
「お前……。俺が下手に出てればいい気になりやがって!」
「あたしがどんな思いで待ってたと思ってるの!」
「俺の気も知らないくせに、何、偉そうに。」
「全部あんたが悪いんでしょ。」
「何を~!女相手だって容赦しねぇからな!」
ケンカが始まりそうな雰囲気に、雅範が慌てて間に入る。
「ま、待って。」
雅範は淳一の方を向くと、上から下までじっと見て確認する。
「ジュン君……の中におじさん?」
淳一はハッと気づいて、すまなそうに頭を掻く。
「おっと、いけない。……すまないね。ちょっと友達の体を借りてるよ。
大丈夫。すぐ返すから。」
雅範はうなずいて、智の方に向き直る。
「智の中にいるのは……。」
雅範はちょっと考えて、
「お…姉さん?」
と、智の顔色を伺う。
「あら、お兄さん、いい男ね。」
智の手が雅範の肩にかかる。
シナを作るように、首を傾げ、腰を横に突き出す智に雅範はドキッとする。
雅範は大きく頭を振り、これは智じゃない、と念仏のように唱える。
「うふふ。私は智じゃないけど、体は智……。」
智の手がいつもより滑らかに動き、雅範の首筋を撫でる。
「止めろ、止めろ!お兄ちゃんに迷惑がかかるだろ。」
淳一が割って入る。
「あら。あたしに指図しようって言うの?」
「なんだと!」
ケンカになりそうな二人の肩を大きく叩いて、雅範が一歩前に出る。
「ケンカはダメ。二人の体は俺の大事な友達なんだから!」
二人はお互いを見回し、下を向く。
「ごめんなさいね……この人が、全部悪いの。」
「何を~!俺の何が……。」
淳一が振り上げた拳を雅範が制する。
「ダメ。ちゃんと話して。俺でもちょっとは役に立つかもしれないよ。」
淳一はバツが悪そうに、腕を引っ込める。
「すまない……。でも、俺がどんなに謝っても、こいつは聞いてもくれなくて。」
「いつ、どこで、謝ったって言うの?あの時だって……。」
「あの時っていつ?」
雅範が聞くと、智は溜め息をついて首を振る。
「……この人が浮気してね。」
智は腕を組んで、淳一を横目で見る。
「俺がいつ浮気したって言うんだよ!」
「いっつも女のケツばっかり追い駆けてるじゃないのさ。」
「お前だって……。」
二人の顔が近づいて睨み合う。
「違うでしょ?俺、まだそういうのよくわかんないけど、
二人とも、浮気を怒るってことは、愛してるってことでしょ?違う?」
雅範の言葉に二人は顔を見合わせる。
「二人とも、こんなに長い時間待ってるくらい会いたかったんでしょ?」
二人は見つめ合い、気まずそうに顔をそむける。
「そもそも俺は浮気なんてしてないし……。」
「あたしだって……。」
二人はチラッとお互いを見る。
「俺が……ずっと待ってたのはお前だけ……。」
「あたしだって……あんたに会いたくて……。」
二人は恥ずかしそうに見つめあう。
「おまいさん……。」
智が潤んだ瞳で淳一を見つめる。
淳一も智の肩を引き寄せ、ひしと抱きしめる。
雅範が、うんうんとうなずいて二人を見ていると、二人の唇が近づいていく。
見た目は智と淳一だけど、中身はおじさんとおばさんだから……。
雅範は両手で顔を覆うと、ぎゅっと目をつぶる。
二人の唇が重なりあい、体がボワッと光りに包まれる。
雅範がそっと指の隙間から覗いてみると、
二人は抱き合いながら、笑って雅範に手を振っている。
「お兄ちゃん、ありがとな。」
「愛してるって忘れないでね~。」
雅範が消えていく二人を見送っていると、バタンと母屋のドアが開いた。
「こんなとこにいたんですか?探しちゃ……え?」
「智……ジュンと何してんの?」
和哉が中庭に降り、続いて嫉妬の炎に身を包んだ修も降りてきた。
雅範がアッと小さく声をもらす。
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