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season #77
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「こ、これは、あ、あのね……。」
雅範が、ズンズンと二人に近づく修と和哉を止めに入る。
智と淳一は抱き合い、唇を重ねたまま身動き一つしない。
「だから、ちょっと……ねぇ、待って!」
雅範の制止も聞かずに、修と和哉は智と淳一を引き離す。
唇が離れた途端、二人の体が崩れ落ちる。
「智!」
修は智の体を抱きとめ、和哉は淳一の体を支える。
「ジュン君……重い……。」
雅範は慌てて和哉から淳一を受け取ると、淳一の頬を叩く。
「ジュン君、ジュン君!」
淳一は眉間に皺を寄せ、目にぎゅっと力を入れる。
「大丈夫?ジュン君!」
淳一がゆっくり瞼を上げる。
しばらくボーッと雅範と和哉の顔を見比べ、頭に手を当てて、また眉間に皺を寄せる。
「いっ……つーっ……。」
「ジュン君、頭、痛い?」
雅範が心配そうに淳一の顔を覗き込むと、淳一は片眉を上げて笑う。
「みんな……どう…したの?」
「ジュンく~ん!」
雅範が淳一に抱きつく。
「だぁ~!抱きつくな!」
「よかった!ジュンく~ん!」
雅範が淳一の頭に頬を擦り付ける。
「だから、止めろって!」
淳一は雅範の頭を両手で引き離す。
「とりあえず、ジュン君は大丈夫そうですね。」
和哉もホッと一息吐き、安心したように淳一を見つめる。
淳一も和哉に笑顔を向け、ハッと気づく。
雅範の腕の中で、さも少女のように抱きかかえられている姿。
「は、離せよ!」
雅範の腕から飛び起き、後頭部を撫でる。
「クスクス。雅範の腕の中のジュン君、可愛かったのに。」
和哉にからかわれて、淳一は雅範をにらみつける。
「俺のせいじゃないから!」
雅範は顔の前で両手を振る。
「ジュン君、何があったんですか?」
和哉の言葉に、淳一も腕組みして考え始める。
「……俺…智を見つけて……。」
淳一はこめかみに手の平を押し当てて、痛そうに顔を歪ませる。
「智は……。」
雅範は思い出したように、修と智の方へ振り返る。
智はさっきのまま、修に抱きかかえられている。
「修ちゃん、智は?」
修の背中に向かって雅範が声を掛けると、修は振り返らずに言う。
「……寝てる………。」
三人が駆け寄ると、修の腕の中で、安心しきったように寝息を立てる智が
良い夢でも見てるのか、ふにゃっと笑った。
「つまり、あのおじさんは幽霊だったと?」
智を部屋に連れ帰り、布団に寝かせたその横で、四人は輪になった。
和哉の質問に雅範が大きくうなずく。
「そうだよ。消えちゃったんだから。」
「で、あの島で女の人の幽霊を智が連れて帰ってきた……。」
智を心配そうに見ながら、修が言う。
「そうそう。」
「ほんとか?」
淳一が訝しそうに雅範を見る。
「みんなに見える幽霊なんて聞いたことない!」
和哉が信じられないと首を振る。
「だって、本当なんだよ!」
「しかも、そのおじさんはジュン君の中に入って、女の人は智の中に入った……と?」
「そうだよ。だから、あのチューはおじさんとおばさんのチューだから。」
すぐには信じられないと、修は淳一の顔を見る。
「俺、全然記憶ないから。」
「全然?」
修が疑い深そうに淳一を見つめる。
「全然!」
「あの柔らかい唇を、全然覚えてない?」
「全然!……って、なんだよ、柔らかい唇って!」
「あ…いや、柔らかそうな唇だな……と思って。」
四人は一斉に智の唇を見る。
赤く、綺麗な形の唇が寝息と共に微かに震えている。
「もったいなかったな……覚えてないなんて。」
淳一がポツリと言うと、当然だと言わんばかりにみんなに睨まれる。
「二人は、成仏できたの?」
和哉が雅範を見る。
「うん。たぶん、できたと思うよ。笑いながら消えていったから。」
「そう……じゃ、もう智の中に、女の人はいないんですね。
あの酔っ払った智はその人のせいなのかな。」
四人は酔っ払った智を思い出す。
やたらと色気を振りまく智。
「そうであって欲しい……。」
修がボソリと言うと、みんな、うんうんとうなずく。
酔うたびにあれでは、周りがもたない。
和哉は、はぁ~と、大きな溜め息をついて、雅範を見る。
「ほんとに、あなたはいっつもトラブルを持ち込む。」
「そ、そんなことないよ。それに、これは俺のせいじゃないし。」
「あなたのせいでしょ?この霊媒体質!」
「そういうこと言うなよ~!」
雅範が泣きそうな顔で怒ると、淳一が優しく雅範の肩を叩く。
「雅範は優しいから、幽霊にもそれがわかっちゃうんだよ。」
「ジュンく~ん!」
雅範は淳一に抱きつく。
「だぁ~っ!抱きつくな!」
淳一は雅範の顔を手の平で押し戻す。
「でも、雅範が取り憑かれたことないですよね?」
「そういう体質なんだろ?」
じゃれ合う淳一と雅範をよそに和哉と修は智を見つめる。
「よほど疲れるんですかね。幽霊が入るって。」
「それにしてはジュンは元気そうだけど?」
「時間……の問題?それにあのおじさん、みんなに見える位だから、霊力が強い?」
「ま、後は帰るだけだし……。ギリギリまで寝かせてあげよう。」
修と和哉は智の寝顔を優しく見つめた。
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