アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
season #81
-
「どういう意味なの~!」
「どうしたの?」
雅範が声を上げると同時に、智と和哉が現れた。
智が小首を傾げて修を見る。
「修ちゃんね、生徒会に立候補するんだって~!」
「生徒会?」
和哉が怪訝そうに修を見る。
「今だって結構忙しそうなのに、これ以上忙しくなろうっての?
まぁ、その間?智のことは俺に任せてよ。」
修に向かって、和哉がニヤッと笑う。
「……俺、立候補辞める。」
「そうだよ、そうしなよ。」
雅範がホッとしたように息を吐く。
「……と言いたいけど、無理だ~!」
修は両手で顔を覆うと、天を仰ぐ。
「そうだよな……智を守る時間がなくなっちゃう……。
そんなことに今更気づくなんて……。」
「え?修君?おいら、守ってもらわなくても大丈夫……。」
「いや、ダメだ。いつ何時、智が辛い目に合うかわからない。
その時に何の役にも立たない俺なんて……。」
「どうするの?修ちゃん、辞める?」
淳一がおもしろそうにニヤニヤと笑う。
「いや、……男として辞めるわけにはいかないんだよ~。」
修はこれでもかと眉尻を下げ、握りこぶしでテーブルを叩く。
「あははは。テーブルが壊れるのも時間の問題だね。」
和哉は笑いながら椅子に腰掛け、弁当を広げ始める。
「まぁまぁ、立候補したって当選するとは限らないんじゃない?」
淳一が片頬をヒクヒクさせながら、口を隠して笑う。
「そ、そうだよな?落選すればいいんだ!そうか!そうだよ!」
修は立ち上がると、両方の握りこぶしを大きくテーブルに叩きつける。
「やる!俺は立候補して、無事、落選する!」
「そうそう、落選……うぷぷぷ。できると思う?」
和哉は隣にいる淳一と雅範に小声で聞く。
二人は大きく首を振る。
「大丈夫。選挙活動しないで、演説も……。」
そんな三人に向かって修が力説し始めると、智がにっこり笑って言った。
「修君は、当選しちゃうと思うな。おいら。」
「智~。」
智はお弁当を広げながら、隣の修を見上げる。
「だって、修君しっかりしてるし、頭もいいし、面倒見もいいし。
みんなを引っ張っていくリーダーって修君のことを言うんだと思う。」
「智……。」
「おいら、いいと思うよ。修君が生徒会長。うふふ。カッコイイ。」
「カッコイイ?俺?」
「うん。できる上にイケメン。学校始まって以来のイケメン生徒会長♪」
「そ。そうかな……。」
修は椅子に座ると、照れたように頭を掻く。
「おいら、応援するね。」
「智……。俺、頑張る。」
それを見ていた三人は、静かに箸を口に運んだ。
「修ちゃん……乗せられちゃったね……。」
雅範が卵焼きを口に運ぶ。
「智にカッコイイって言われちゃったらね……。」
淳一がウィンナーを口に運ぶ。
「まぁ、智には悪いけど、会えない時間は二人の距離を作る……んじゃない?」
和哉が肉団子を口に運ぶと、二人に目をやる。
二人は目を見開いてうなずくと、ニヤリと笑った。
「修ちゃん、俺も応援する。」
雅範が大きな声で修に向かって言うと、二人も続いた。
「俺も。」
「仕方ないですねぇ。私も応援しますから。」
三人は同じ顔でにっこり笑った。
修は三人の態度の変化に首を捻る。
「お前ら、何か……。」
修の言葉をさえぎるように、淳一が智に話しかける。
「今日はどうして遅かったの?」
智はお弁当から顔を上げ、ニコッと笑う。
「うん、コンクールに出品する作品、提出してきたから。」
「へぇ。智、コンクールに出すんだ。どんな絵?」
淳一は口を動かしながら、智を見つめる。
「んふふ。それは秘密。」
智は頬を少し染めて笑う。
「私も出品してきたんですよ。」
和哉がうずらの卵と格闘しながら言う。
「え?カズも絵、描いたの?」
雅範がびっくりして和哉を見る。
「ばか。私は写真。ま、入賞間違いないでしょう。」
和哉の自信たっぷりの言葉に4人は顔を見合わせる。
「まさか……俺らの恥ずかしい写真とかじゃないよね?」
雅範が代表して和哉に聞く。
「それは、見てのお楽しみ♪」
和哉は楽しそうに箸を進める。
4人はまた顔を見合わせた。
修は結局、生徒会長に立候補した。
智の描いたポスターのおかげか、はたまた、淳一の応援演説のおかげか、
みごと当選をはたした。
部費が優遇されるという噂はは本当かどうかわからなかったが、
サッカー部の予算は上がり、例の噂は真実として広まっていった。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
81 / 83